【8月3日 AFP】女児よりも男児を好む文化のある国で行われている性別に基づく選択的中絶などにより、世界で生まれる女児の数は今後10年で470万人少なくなると推定する研究結果が2日、発表された。これにより、長期的に社会的結束が損なわれる可能性があると指摘されている。

 予想される女児の出生数減少に基づくと、2030年までに世界で30%以上の男性が余剰となり、反社会的行動や暴力の増加につながる可能性が示唆されている。

 性別に基づく選択的人工妊娠中絶は過去40年で、欧州南東部、南アジアや東アジアの国々で増加しているが、人口動態への影響は明らかになっていない。

 研究を行った国際チームは、過去50年の出生データ30億件以上を分析。1970年以降、女性の数に対し男性の数が増えている12か国と、社会・文化的傾向により男女の数の差が増す恐れがある17か国に焦点を当て、二つのシナリオをシミュレーションした。

 一つ目のシナリオは、統計的証拠に基づき、男女を産み分ける割合が増加すると仮定。二つ目のシナリオは、観察された傾向や出生率の低下に基づき、特定の国で男女の産み分けが進むと仮定した。

 その結果、シナリオ1では世界の女児出生数が2030年までに470万人、シナリオ2では2100年までに2200万人以上減ると試算された。

 研究チームは、男児に偏る国では「結婚難」が起こる可能性があると指摘。「人口における女性の割合が予想以上に少ないと、反社会的行動や暴力が増加し、長期的な安定や社会の持続的発展に影響を及ぼす可能性がある」としている。

 国連(UN)は「ミレニアム開発目標」で、児童婚や女性性器切除と並び、子どもの性別の選択を有害な慣習だとしている。

 論文は、「出生前検査による男女の産み分けなどの有害な慣習の根幹にあるジェンダー規範の変化を働きかける必要性が、より広範な目標として挙げられる」とし、「男女平等を確保するための広範囲な法的枠組みが求められる」と指摘した。

 論文は、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)に掲載された。(c)AFP