アプリ見るだけでコインゲット 中国で新規ユーザー獲得狙うサービス
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【7月26日 東方新報】スマホでアプリを見るだけで電子コインが得られるサービスが中国で広まっている。アプリのユーザー人口が頭打ちになる中、「出血」してでもユーザーを増やすのが当たり前となっている。
中国西部の甘粛省(Gansu)の地方都市に住む50歳の韓峰(Han Feng)さんは夕食後、ベッドに横たわりながら3台のスマホをテーブルに並べ、ショート動画投稿サイト「抖音(Douyin)」と「快手(Kuaishou)」、人気ニュースサイト「今日頭条(Jinri Toutiao)」のアプリを同時に開く。30秒ほど不動産広告を見たり化粧品のビデオを見たりするだけでコインが手に入るためだ。韓さんの子どもは既に独立して働いており、「アプリをいじって小遣い稼ぎをして、退屈な日常を埋め合わせている」と話す。
統計によると中国のインターネットユーザーは9億8000万人、ショートビデオアプリ業界の月間平均ユーザーは8億3000万人に達している。14億人の人口を擁する中国でも飽和状態となっている。そこで抖音や快手などは「眠れる市場」である地方都市の中高年を掘り起こすため、アプリの機能を簡素化した「極速版(エクストリーム版)」を作り、コインサービスを打ち出している。
食事アプリで朝昼晩と画面のメニューを選んでクリックする「エア食事」をして200コイン、買い物アプリで商品を1日10回「エア買い物」するだけで2000コイン、健康アプリで歩いてノルマを達成すると500コイン…。スマホをいつも眺めている若者も当然こうしたアプリを活用しているが、「スマホは電話と微信(ウィーチャット、WeChat)ぐらいしか使わない」という地方都市の中高年層を刺激してアクティブユーザーに転換する役割を果たしている。1日10分見るだけで30元(約510円)分のコインを得られるアプリもある。通常の広告やプロモーション活動で新規ユーザーを獲得するには数百元のコストがかかるとされ、これぐらいの「出血サービス」はむしろ安上がりという。貯まったコインはキャッシュレス決済サービスの「支付宝(アリペイ、Alipay)」などを通じて実際の買い物などに使うことができる。
アプリで小遣い稼ぎをする人たちは「羊毛党」と呼ばれている。1999年の春節に中国中央電子台(CCTV)が放送したドラマ「昨日、今日、明日」で、貧しい時代に牧場で働いていた妻が毎日少しずつ羊の毛を隠して持ち帰り、夫のセーターを編むエピソードに由来する。
ただし、1人のユーザーが同じアプリを使っていると、コインの還元率はどんどん低くなる。サービスする側からすれば、アクティブユーザーになった人にはもはや多くの「投資」をする必要は無く、限られた資金を新しいユーザー獲得に投入するためだ。
韓峰さんも最近、複数のアプリを見ても1日に1元(約17円)程度のコインしか稼げなくなった。「それでも饅頭(具なし肉まん)1個ぐらいは買えるから」と、空いた時間はずっとアプリチェックを続けている。
中国メディアは「羊毛党は少しずつ毛をむしって小遣い稼ぎをしているが、逆に自分たちの時間をむしられている」と評している。(c)東方新報/AFPBB News