【11月10日 東方新報】スマートフォンから目が離せない「スマホ中毒」というと若者の問題だと思われるが、中国では高齢者のスマホ中毒が話題になっている。全国で10万人を超えるという推計があり、高齢者を取り巻く環境を象徴した問題となっている。

 中小都市や農村部の人口10億人をターゲットに急成長しているニュースアプリ「趣頭条(Qutoutiao)」は10月下旬、「高齢者のインターネット生活リポート」を発表した。「趣頭条」は身近な娯楽情報と生活情報にコンテンツを特化し、人工知能(AI)を活用してユーザーに最適化した話題を提供している。リポートによると、60歳以上のユーザー100万人を調べたところ、1日平均10時間以上、「趣頭条」にアクセスしている人が0.19%いたという。このデータをもとに推計すると、全国で同程度の「スマホ漬け」となっている高齢者は10万人を超えるという。

 インターネット上では、「高齢の親がスマホ中毒に」という書き込みが散見されるようになった。「私が子どものころ『テレビばかり見るな』と言っていた親が、今や1日中スマホを見ている」「新しいスマホをプレゼントしたら手放さなくなった」という悩みがつづられている。

 そもそも、中国では「スマホがなければ街を一歩も歩けない」といわれるほど、スマホが必需品となっている。コンビニやスーパーの買い物は、現金ではなくスマホのモバイル決済が当たり前。さらに新型コロナウイルスが流行して以降、スマホに健康状態を示すアプリ「健康碼(健康コード、個人の健康状態を示すQRコード)」をインストールし、感染者でないことを示さないと交通機関にも乗れない状態に。高齢者もスマホを扱えないと日常生活すら送れないほどだ。

 また、共働きが当たり前の中国では、子どもの面倒を祖父母が見ることはありふれた光景だが、祖父母はスマホを使って子どもと一緒にアニメを見たりゲームをしたりしているうちに、自然とスマホにも詳しくなる。一方で、変化の激しい中国社会で家族の絆やご近所付き合いが希薄になり、孤独を埋めるためスマホに依存する高齢者もいる。中国の社会環境全体が高齢者のスマホ中毒を招きやすい傾向になっているともいえる。

 高齢者がスマホで好むコンテンツは漫才や生活・健康情報、心温まる話題、元気になるニュースなど、問題のなさそうなテーマが多いが、1日中スマホを見続ける生活は心身に問題が起きやすくなることは世界各国で警告されている。高齢者をターゲットにした詐欺事件も心配されている。最近は、中国の人気俳優・靳東(Jin Dong)さんをかたったネットユーザーと交流していた60代の女性が、「靳東と一緒に暮らす約束をした」と言って家を飛び出した「ニセ靳東事件」が中国で話題となった。一部の識者は「少し前までパソコンすら触ったことがなく、急にスマホを使い出した高齢者は依存症になりやすく、インターネットの世界への警戒心もない」と指摘。社会全体で高齢者向けのネット啓発活動に取り組み、高齢者の孤立を防ぐ取り組みも必要としている。(c)東方新報/AFPBB News