【7月20日 東方新報】コロナ禍で紆余(うよ)曲折を経て、間もなく開幕する東京五輪。中国のスポンサー企業も目まぐるしく変わる状況に振り回されながら、ようやく商戦の開幕を迎える。

 中国を代表するIT・流通大手の阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)は2017年、国際オリンピック委員会(IOC)最高位スポンサー「The Olympic Partners(TOP)」に入り、2028年まで3回の冬季・夏季五輪をサポートする立場となった。コカ・コーラ(Coca-Cola)やパナソニック(Panasonic)などTOP13企業のうち、唯一の中国企業だ。

 単にスポンサーになるだけでなく、アリババは五輪のクラウドサービス業務を請け負っている。東京五輪では映像管理や選手の動きの3D分析を行い、来年の北京冬季五輪ではビッグデータ分析やチケット発券、セキュリティーなど幅広く大会を支える。東京五輪はアリババの最新技術を世界に誇る「祭典」でもあるため、五輪が中止になる最悪の事態を回避できたことに安堵(あんど)している。

 また、アリババが展開する世界最大規模のECプラットフォーム「天猫(Tmall)」などを通じて五輪公式グッズの販売を行う。世界的に盛り上がりに欠ける状況を反映して、現時点で五輪グッズの売り上げは低迷。アリババは、インフルエンサーらが商品を宣伝・販売するライブ配信「淘宝直播(タオバオライブ)」で五輪期間中に「金メダル応援ステーション」を開設する。「ライブ販売の女王」といわれる薇婭(Viya)ら有名インフルエンサーを投入し、売り上げ増加を狙う。

 一方、大打撃を受けているのが中国旅行会社大手の凱撒旅遊(Caissa)だ。東京五輪の中国オリンピック委員会(COC)管轄エリアの独占チケット業務代理機関となったが、3月に東京五輪・パラリンピックは海外からの観客を受け入れないことが決まり、チケット払い戻し業務に追われている。4月に払い戻しの申請をした人に7月から返金が始まり、5月に申請した人は五輪閉会後になる。ホテルへの前払い金など既に投入した資金も多く、その回収にも手間と時間を要する。同社は2019年の純利益は1億2600万元(約21億3734万円)だったが、コロナ禍の直撃を受けた2020年は純損失が6億9800万元(約118億4031万円)に達している。そして期待していた五輪のチケット業務収入も見込めなくなり、同業他社のM&Aも検討して窮地をしのごうとしている。

 東京五輪の生観戦できなくなり、逆に注目を集めているのがショート動画配信プラットフォームの「快手(Kuaishou)」。中国のショート動画というと「抖音(Douyin)」を運営する「字節跳動(ByteDance、バイトダンス)」が有名だが、快手は中国では字節跳動と並ぶ存在だ。その快手は中国中央広播電視総台(CCTV)との間で東京五輪と北京冬季五輪におけるショート動画放送について合意しており、東京五輪の放送権を取得している。

 快手科学技術部門上級副総裁の厳強(Yan Qiang)氏は「快手のプラットフォームで五輪専用チャンネルを開設し、五輪の一瞬一瞬を伝えていく。競技のオンデマンドは600本以上に上り、視聴人口は5億人を見込んでいる」と鼻息が荒い。

 東京五輪は来年に迫る北京冬季五輪のビジネスモデルにもなり、各企業が競技場の外で激しい戦いを繰り広げている。(c)東方新報/AFPBB News