■矛盾した映画業界

 温暖化の危機的な兆候が次々に出始めている中、世界各地から人を集めて映画祭を開催することはいまだに許されるのだろうか。

 フランスの配給会社オーエクール(Haut et Court)代表で、気候変動に関する議論を先導する一人、キャロル・スコッタ(Carole Scotta)氏は「意識の変化は間違いなく起きている」と話す。だが、カンヌ映画祭の場合は複雑で、世界を代表する映画祭として「ある程度の祭典らしさを保たなければならない」ため、「ビーチサンダルで登場するわけにはいかない」と続けた。

 カンヌ映画祭にベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)、サンダンス映画祭(Sundance Film Festival)、ベルリン国際映画祭(Berlin Film Festival)──。映画祭のメリーゴーラウンドは「地球にとって良いことではない」とスコッタ氏は認識している。

 その一方で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を通じて、オンライン開催という代替手段が可能なことが示された。

 フランスのシンクタンク「シフト・プロジェクト(The Shift Project)」のシモン・バランシ(Simon Valensi)氏は、環境問題に対する映画業界の姿勢は矛盾していると指摘する。

「2050年までに(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルを実現するというパリ協定(Paris Agreement)を守りたいのであれば、遅かれ早かれ、大規模な映画祭が生み出す排出量は問題にされるべきだ」と語る。

 一方で、これまでの取り組みはそれほど大きなものではないとしながらも、「(カンヌ)映画祭がその経済的影響について考えていることはすでに大きな革命だ」と述べた。(c)AFP/Francois BECKER