■「希望をつないでいる」

 米国で1年過ごして東京に戻ったのは、ちょうど1997年に京都議定書(Kyoto Protocol)が採択された頃だった。京都議定書には、先進国に温室効果ガスの削減目標を義務付ける拘束力がある。

 日本は同議定書を生んだ会議のホスト国だったものの、「変化していくことに、すごく抵抗感が強い」と平田氏は言う。

 気候ネットワークが1998年に設立されてから平田氏は、事なかれ主義と思える日本社会の風潮と闘ってきた。

「政治に不満があっても、家の中で文句は言っても、そのために社会的に行動する」人がいないと指摘した。「みんなと違うことを言ったらいけないんじゃないかとか。そういう空気の中で育てられている」

 しかし、日本には行動を起こさずに周りの様子をうかがっている余裕はないと平田氏は指摘する。以前より強力化した台風や豪雨で壊滅的な水害が発生するなど、気候変動の影響にさらされている今はなおさらだ。

「考え方を直さないと若い人が(気候変動の)犠牲者になってしまう」

 温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指す日本の新たな目標に合わせた取り組みを国内企業が推進するなど、期待できる兆候もあると平田氏は話す。

 東芝(Toshiba)は、石炭火力発電所の新規建設から撤退し、再生可能エネルギーに移行する方針を発表した。本田技研工業(ホンダ、Honda Motor)やトヨタ自動車(Toyota Motor)などの自動車メーカーは、電気自動車や燃料電池車、カーボンニュートラルの生産ラインの新目標値を設定している。

「今だったら間に合うので、そこには希望をつないでいます」と平田氏は言う。「ここから結果を出せるのか。チャレンジだと思います」 (c)AFP/Natsuko FUKUE