【5月24日 AFP】中国で開催されたクロスカントリーマラソンで、悪天候のため参加者21人が死亡した問題を受け、マラソン業界に厳しい目が向けられている。マラソンは国内で盛り上がりを見せる一方で、物議を醸し、失態も続いている。

 中国北西部甘粛(Gansu)省の山岳地帯で22日に行われた全行程100キロの大会では、ひょうや冷たい雨、強風などの影響で参加者が亡くなったとされる。

 当局が調査を開始する中、中国のソーシャルメディアには被害者を悼む声と、主催団体はなぜ荒天にさらなる備えを講じていなかったのかと疑問を呈する怒りの声があふれた。

 だが、同国の一部のウルトラマラソンやマラソン、ハーフマラソン、長距離走大会などの質や運営をめぐっては、以前から懸念が生じていた。

 政府は年齢層を問わず運動を強く推奨しており、ランニングは大ブームとなった。ランナーの大半が中間層で、最先端のスポーツウエアやウエアラブル端末を身に着けて走っている。中には、記録をソーシャルメディアで自慢する人もいる。

 全国規模の陸上競技団体である中国田径協会(CAA)の統計に基づく昨年の報道によると、2018年に国内で開催されたマラソン大会の数は14年の40倍。19年には1900件の「ランニング競技会」があり、上海マラソンなどの有名大会には、多い時で3万8000人が出場する。

 中国中央テレビ(CCTV)は24日ウェブサイト上で、甘粛省の悲劇は「近年、中国のほぼ全土で盛況のマラソン行事に対する警鐘」であり、「コースの計画、安全性の確保、医療態勢の整備、緊急時の救助、食料の支給などに万全を期し、ミスがあってはならない」と指摘した。

 国営メディアが「マラソン熱」と呼ぶこのブームが、競技内容以外でトップニュースになるのはこれが初めてではない。2018年には深セン(Shenzhen)で開催されたハーフマラソンで、参加者258人が近道をするなどの不正が発覚。19年には徐州国際マラソン(Xuzhou International Marathon)で、参加者が自転車を使用している姿が動画に収められたこともあった。

 大衆紙・新京報(Beijing News)は社説で、マラソンの爆発的な人気に安全性の強化が伴っておらず、主催団体は現地当局を含め、大勢の参加者を集めて金もうけをする方を優先していると苦言を呈した。(c)AFP/Peter STEBBINGS