アフガニスタン最後のユダヤ人、タリバン復権恐れ決別のとき
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【5月19日 AFP】アフガニスタンに住む最後のユダヤ人、ゼブロン・シメントフ(Zebulon Simentov)さん。何十年にもわたって同国にとどまり、ソ連軍の侵攻、壊滅的な内戦、旧支配勢力タリバン(Taliban)の虐政、そして米軍主導の占領を耐え抜いてきた。
しかし、我慢にも限界がある。タリバンがさらに勢力を盛り返す見通しが高まり、彼はいよいよこの地と決別する準備を始めた。
「なぜとどまる必要があるのでしょうか。異教徒と呼ばれながら」。首都カブール中心地の古い建物にある市内唯一のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で、シメントフさんはAFPに語った。「ここにいては、私にとって事態が悪化しそうです。タリバンが戻って来るなら、イスラエルに去ろうと決心しました」
米バイデン政権が年内に駐留米軍を完全撤退させることに合意し、アフガニスタン政府と反政府勢力の間で和平交渉の努力がなされる中、タリバン復権の可能性は濃厚だ。
1950年代に西部の都市ヘラート(Herat)で生まれたというシメントフさんは、ソ連の軍事支配が続いていた1980年代初期にカブールへ移住。当時の首都は比較的安定していたと言う。
ユダヤ人はアフガニスタンに2500年以上前から住み始め、かつては数万人がヘラートに居住していた。同市には今でも4か所のシナゴーグが残っている。しかし、19世紀以降はこの国を去るユダヤ人が絶えず、イスラエルに移り住んだ人も多い。
この数十年で、妻や2人の娘を含むシメントフさんの親族も皆、去ってしまった。今確かなのは、自分がアフガニスタンに住む最後のユダヤ人だということだ。
アフガニスタン伝統のチュニックとズボン、ユダヤ教徒の黒い帽子と黒革製の小箱を身に着け、自らを誇り高いアフガン人と呼ぶシメントフさん。ソ連軍侵攻前の時期が、アフガニスタンにとって最良の時代だったと懐かしむ。「あの頃は、どんな宗教、宗派の信者も完全に自由でした」