獄中から父となるパレスチナ人 「精子持ち出し」体外受精
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■「たくさんの女性に希望を」
ヨルダン川西岸に住むダラル・ジベン(Dallal Zibn)さん。息子のサラーフッディーン(Salaheddine Zibn)さんとムハナド(Muhannad Zibn)君の兄弟は、一度しか父親に会ったことがない。それも刑務所の面会でだ。当時、兄は5歳、弟は生後2週間だったとダラルさんはAFPに語った。
ダラルさんによると、イスラエルに収監されているパレスチナ人男性の精子による体外受精で初めて生まれたのが息子たちだ。担当したパレスチナ人の医師、ゴッソン・バドラン(Ghosson Badran)氏もそう認めている。
「一番目の例になれて、とても誇らしいです。子どもを持つのは私たちの権利ですから」とダラルさん。「たくさんの女性に希望を与えることができました」
夫のアマルさんはハマスの一員として対イスラエル攻撃を計画した罪で、1997年から終身刑に服している。
夫に体外受精を提案されたときは、それが何か理解できずにためらったが、医師にも説得され、2012年にやってみようと決意した。夫が投獄される前に娘たちを授かっていたが、息子たちも欲しいと思った。
精子をひそかに持ち出したという話について、イスラエル刑務局(Israeli Prisons Service)は懐疑的だ。
刑務局の広報を担当するハナ・ヘルブスト(Hana Herbst)氏は「そのような証言を裏付ける情報や証拠は持ち合わせていません」とAFPに語った。「生殖医療に必要十分な精液をどうやって渡すことが可能なのか、分かりません」
■「依頼者に質問しない」
パレスチナ人受刑者を支援する非政府組織(NGO)「パレスティニアン・プリズナーズ・クラブ(Palestinian Prisoners Club)」の推計では、すでに同じ方法で、受刑者を父とする子ども96人が生まれている。
その母親たちの多くは、西岸のナブルス(Nablus)にあるラザン・センター(Razan Centre)で出産した。バドラン医師によると、同センターは高齢出産の女性と長期受刑者の妻だけを受け入れている。
しかし預かった精子が、獄中の夫のものであることを検証するのは難しい。バドラン医師によると、体外受精の施術の前に、夫婦両方の家族の宣誓陳述書が必要だ。
「(精子の)受け渡し方法は分からないし、私たちは詳細を尋ねません」とバドラン医師はAFPに語った。多くの依頼者にとって体外受精による出産はイスラエルに対する「勝利」だとしても、医療チームは「政治に関わらない」ようにしていると言明した。
ガザ地区のヒンダウィ医師も、依頼者への質問は「自分の仕事ではない」と言う。「信頼があるから、DNAのことなど誰も聞かない。これを持ち込むのは妻たちだ」
幼いムハナド君にとって大事なことはただ一つ。早く父親に会い「ハグして、一緒におもちゃを買いに行きたい。他の子たちのように」と言う。(c)AFP/Claire GOUNON