【4月18日 AFP】夜が明けると、ゾウの「トルストイ(Tolstoy)」がゆっくりと歩く姿が見える。地面に届くほど長い牙を持つトルストイは、アフリカ最高峰キリマンジャロ(Kilimanjaro)の麓で50年近く生きている。

 象牙を狙う密猟者や、やりによる攻撃、深刻な干ばつをトルストイは乗り越えてきた。だが今また彼の前に新たな脅威が立ちはだかっている──アボカド需要の高まりだ。

 ゾウやその他の野生動物が生息するケニア有数のアンボセリ国立公園(Amboseli National Park)付近では、アボカド農場をめぐる縄張り争いが起きている。

 国際自然保護連合(IUCN)は最近、密猟と特に農業への土地転換による生息地の破壊が、アフリカ全土でゾウの個体数を激減させていると警告した。

 IUCNは絶滅危惧種をまとめた「レッドリスト(Red List)」を更新。アンボセリ国立公園周辺にも生息するサバンナゾウは、個体数がこの50年間に少なくとも60%減少し、絶滅の恐れが2番目に高い「絶滅危機(EN)」に分類された。

■緑の黄金

 ケニアは主要なアボカド生産国だ。アボカドは、世界中のカフェが提供するおしゃれなメニューに欠かせない存在となったため、輸出が急増した。

 ケニアの生鮮食品輸出業者協会によると、同国のアボカド輸出量は欧州市場で6番目の地位を占める。昨年10月までの1年間で33%増加し、輸出額は1億2700万ドル(約140億円)に上る。

 輸出が急増する中、ケニア国家環境管理局(NEMA)は、アグリビジネス企業「キリアボフレッシュ(KiliAvo Fresh)」がマサイ(Maasai)人から土地を購入し、アボカド農場を設けることを許可した。

■アボカドか、ゾウか

 近隣の土地所有者や野生動物の専門家らは、アボカド農場とゾウは共存できないと断言する。推定2000頭ものゾウが、水や牧草地を求めて移動するルートが妨げられるからだ。すでに農場の電気柵にゾウが衝突する事故が相次いでいる。

 野生動物保護団体「ワイルドライフ・ダイレクト(Wildlife Direct)」を率いるポーラ・カハンブ(Paula Kahumbu)氏は、ケニアの商業農業は「動物にとって、密猟よりもはるかに危険」になっていると言う。外国の消費者に対し、スーパーで手にする商品がどういうものか理解してほしいと述べた。(c)AFP/Nick Perry