【4月25日 AFP】イエメンで10人の女性が、周囲から冷ややかな目で見られながら、ひるむことなく地元の村に電気をもたらすという先駆的な取り組みを実現した。イマン・ハディ(Iman Hadi)さん(36)と仲間の女性たちは今、戦禍で荒廃した国内各地に太陽光発電を利用したマイクログリッド(小規模発電網)を拡大する夢を抱いている。

 イエメンは、壊滅的な内戦によって大半のインフラが破壊され、国民は飢えと貧困に苦しんでいる。

 ハディさんは2019年から、首都サヌア北西に位置し、反政府武装勢力が掌握するアブス(Abs)で「フレンズ・オブ・エンバイロメント発電所(Friends of the Environment Station)」を女性のみで運営している。太陽光パネル6基を備えたこの発電所は、村の数十世帯にとっては唯一の電力供給源だ。

 事業のアイデアは、アラビア半島の最貧国イエメンで、戦争の影響を少しでも和らげるために自分たちで何かできないかと模索した時に生まれたとハディさんは言う。

■地元への融資で市民を援助

 イエメンでは、2014年以降、紛争による死者は数万人に上る。同国では、イランから支援を受けた反政府武装勢力フーシ派(Huthi)と、国際社会が支持し、サウジアラビア主導の連合軍が援助する政府が内戦を続けている。

 紛争前に公共電力供給網を利用していたのは、国民の約3分の2だけだったが、内戦によって発電所をはじめ、病院や事業所も破壊されるか休業に追い込まれた。深刻な燃料不足もあり、多くの市民がろうそくの火を頼りに働くことを余儀なくされている。

 絶望の底にあるイエメンで希望の光となっているのは、都市部や農村の住宅の屋上に設置され始めた太陽光パネルだ。

 ハディさんの発電所は、国連(UN)や欧州連合(EU)に資金と研修を受けて運営されているが、こうした事業は市民が収入を得る一助にもなっている。ハディさんは毎月約2000ドル(約22万円)の純利益から小口融資を行い、地元の人々が食料品店やパン店などの小規模事業を始める援助をしている。