【3月24日 東方新報】中国の原子力開発を担う国有企業、中国核工業集団(CNNC)は19日、国産原子炉「華龍1号(Hualong One)」を採用したパキスタン・カラチ原発2号機が送電網に接続されたと発表した。中国が初めて海外に輸出した原子炉が稼働することで、同国の原子力業界の海外進出が加速しそうだ。

 華龍1号は、CNNCと中国広核集団(CGN)双方が設計した第3世代炉を一本化したもの。格納容器は二重構造で、耐用年数は60年。年間約100億kWhを発電し、パキスタンでは100万人分の生産・生活需要を満たすという。発電量は石炭に換算すると年間312万トンで、二酸化炭素を年間816万トン削減し、7000万本以上の木を植えることに相当するとしている。

 中国は国内で1990年代から原発を建設しているが、フランスのアレバ社など外国企業の設計・技術に依拠してきた。華龍1号は中核設備の国産化を実現し、主要技術と機器の知的財産権は中国が保有している。設備全体でも国産化率は88%に達した。

 CNNCは「知的財産権を保有する第3世代炉の開発国として、米国、仏国、ロシアに次いで4番目になった」とアピールし、「原子炉技術の独占状態を打ち崩し、中国は原子力技術先進国の仲間入りを果たした」と意義を強調している。

 インドと長年対立が続く中国にとって、インドと対立関係にあるパキスタンは古くからの友好国だ。中国メディアが行った「最も信頼できる国は?」というアンケートで、パキスタンが1位に選ばれるほど。中国が進めているシルクロード経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」においてもパキスタンは重要な位置を占めており、中国製原発を初めて輸入する国となった。

 CNNCの会長を務めた王収軍(Wang Shoujun)氏は「一帯一路構想に基づき今後10年間で海外30か所に原発を建設し、中国企業が1兆元(約16兆7112億円)の利益を上げることも可能だ」と話している。

 原発は大きなビジネスとなるだけでなく、輸出相手国に大きな存在感を示すことができる。国の成長を支えるエネルギーを保証することで、政治的な結び付きの強化や国民の対中感情向上につながる可能性がある。華龍1号は英国ブラッドウェルB原発建設プロジェクトへの採用も決まっており、年内中にも設計承認確認書が発給されるとみられている。原発輸出が順調に進めば、中国の国際的影響力も高まっていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News