【3月2日 AFP】スポーツ仲裁裁判所(CAS)は1日、イラン柔道連盟(IRIJF)に科されていた資格停止処分を取り消し、国際柔道連盟(IJF)に審理を差し戻した。

 イラン連盟は、2019年の世界柔道選手権(World Judo Championships 2019)で、当時自国の男子選手だったサイード・モラエイ(Saeid Mollaei)にイスラエルの選手との対戦を回避するように命令したとして、同年10月にIJFから処分を受けていた。

 CASは裁定文で、イラン連盟がIJFの規則に関して「重大違反を犯した」として、適切に処分されるべきだと強調しながらも、「しかしながら、当委員会は2019年10月22日に科された処分内容(無期限の資格停止)はIJFの規則に基づくものではなかったと結論付けた」と説明した。

 一方、今回の判断によって、イランの柔道選手は今年に延期された東京五輪への参加が認められることになった。イラン連盟は「素晴らしい勝利」と裁定を歓迎すると同時に、これでIJFとの関係が「改善」されることを望んでいるとの考えを示した。

 元世界王者のモラエイは、2019年世界柔道の男子81キロ級で母国と対立関係にあるイスラエルのサギ・ムキ(Sagi Muki)との対戦を避けるべく、イラン連盟から試合を放棄するように命じられた。この結果、同種目ではムキが金メダルを獲得し、3位決定戦にまわったモラエイが銅メダルとなった。

 イラン連盟は疑惑を否定していたが、IJFは無期限の資格停止処分を決定。イラン国内から非難を浴びたモラエイは、その後モンゴルへ避難し、それ以来同国の選手として大会に出場している。

 原則では帰化選手がその国の代表資格を得られるのは3年後となっているが、国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、モラエイが新たな国の代表になることを承認。同選手は先月イスラエルで開催されたグランドスラム・テルアビブ大会(Judo Tel Aviv Grand Slam 2021)に出場し、同地で熱烈な歓迎を受ける中で同級の銀メダルに輝いた。(c)AFP