【2月8日 AFP】霧に包まれたイタリア・ベネチア(Venice)のサンマルコ広場(St Mark's Square)の周りを、贅(ぜい)を凝らした装いの男女が散策していた。先週末、有名なベネチアのカーニバルが開幕したが、新型コロナウイルス流行の影響で、例年詰めかける観光客の姿はなかった。

 昨年もベネチアのカーニバルはコロナの流行初期に当たり、予定の切り上げを余儀なくされた。今年はいくつかの行事がオンラインで実施され、カーニバルの盛装をしたベネチア市民の姿が動画配信される。

 カーニバルを訪れた会社員のキアラ・ラガツォン(Chiara Ragazzon)さん(47)は、今年は「まさに超現実的です」と語った。「一番の衝撃は、この静けさです。カーニバルの最中はいつでも音楽が聞こえて、みんなが楽しんでいる。でも、ベネチアは霧の中にいる──それでも魔法のような場所です」

 サンマルコ広場から少し歩くと、絵の具がついたオーバーオールに身を包んだハミド・セディ(Hamid Seddighi)さんが自営の工房で、カーニバルの仮面を制作していた。型取りから仕上げまで、非常に繊細に、精密に行っている。

 だが作品には買い手がなく、ただ積まれていくばかりだ。コロナ下で売り上げは70%落ち込んだ。主な顧客だった外国人観光客が来なくなったことが大きい。

「私は仮面を35年間作り続けてきました。だがこれは悲劇です。今年のカーニバルで売れたのは、たった2つです」とセディさんは語った。(c)AFP/Brigitte HAGEMANN