【2月1日 AFP】スウェーデン・イエーテボリ(Gothenburg)で開催される国際映画祭でプレミア上映される70作品を、離れ小島の灯台に特設された「映画館」で1週間、一人で好きなだけ楽しめる──こんな特別な休暇の権利が、新型コロナウイルス治療の最前線で闘ってきた看護師のリサ・エンロート(Lisa Enroth)さんに贈呈された。

 首都ストックホルムから400キロ離れたスウェーデン西岸沖の孤島にあるパターノステル灯台(Pater Noster Lighthouse)跡地のホテルで、ヨーテボリ国際映画祭(Gothenburg Film Festival)に出品された映画70作品をほぼ完全に孤立した環境で自由に鑑賞できる権利には、世界45か国から1万2000人以上が応募した。

 赤い色が鮮やかなパターノステル灯台は、1868年に建造された。かつて灯台守の一家が暮らしていた赤い壁の建物が近くにあり、現在はホテルとして使用されている。島を訪れる方法は船かヘリコプターのみで、行き来は天候に左右される。

 映画祭の主催者側は面談と考査の末、2021年の映画祭のテーマ「Social Distances」に沿った人選として、スウェーデン中部シェブデ(Skovde)にある病院の救急病棟に勤務する看護師のエンロートさんに権利を贈呈すると決めた。

 エンロートさんは、パンデミック(世界的な大流行)が始まってからというもの、通常の業務に加えて新型コロナウイルス患者の治療にも当たり、激務の日々を送ってきた。映画祭に応募した理由は、映画が大好きだというだけでなく、コロナ禍での多忙な毎日を一休みしたかったからだという。「めちゃくちゃ忙しかったので、落ち着いてこの1年間を振り返ることができるのは、良い機会だ」と語った。

 映画鑑賞用のスクリーンは灯台の最上部にある灯室に設置され、部屋からは大海原と島の海岸線を360度見渡せる。島内の建物の中にも大型スクリーンが設置されている。島のどこか別の場所で映画を鑑賞したければ、専用タブレット端末とヘッドホンも提供される。一方、自分のパソコンなどは持ち込めず、エンロートさんが外界と接するのは鑑賞した映画について感想を語るビデオ日記だけになる。

 オンラインで開催される今年の映画祭は、他にイエーテボリ市内2か所でも定員1人の上映会を行う。映画祭のクリエーティブ・ディレクターを務めるヨナス・ホルムベリ(Jonas Holmberg)氏は、新型コロナウイルス対策で多くの映画館が閉鎖されている中で、こうしたイベントを通じて人々が映画への興味を持ち続けてくれることを願っていると話した。(c)AFP