【1月7日 AFP】英国と南アフリカで確認された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の二つの変異株は、いずれも従来の株より感染力がはるかに強いとみられることから懸念が広がっている。二つの変異株について分かっていること、まだ分からないことを以下にまとめた。

■どんな変異?

 あらゆるウイルスは自己複製する際、環境に適応するために変異する。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原体であるSARS-CoV-2が2019年後半に中国で確認されて以来、研究者らは多数の変異を追跡してきたが、大半ではウイルスの毒性および感染のしやすさに大きな変化はなかった。

 だが、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)によると、昨年9月に英イングランド南東部で出現したとみられる変異株の一つ「B117」は、これまでに米国、フランス、インドなど世界中の国々で確認されている。昨年10月に南アフリカで検出されたもう一つの変異株「501.V2」は、以来、英国やフランスなど複数の国に広がっている。

 いずれの株も複数の変異がみられるが、特に著しい変異が起きていたのはウイルスのスパイクタンパク質の部分だ。スパイクタンパク質はヒトの細胞に結合し、感染を促す働きをする。

 具体的には、ヒト細胞側の受容体に結合するスパイクタンパク質上の部位(受容体結合ドメイン)「N501Y」で変異がみられる。N501Yの変異株は、ヒト細胞受容体ACE2との結合親和性を高め、他の株より感染しやすくなっていると考えられる。

 欧州連合(EU)の保健機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、ACE2との結合作用の強化と感染力の強化の間に「明確な関連性はない」としながら、「あってもおかしくはない」と指摘している。

■変異株は感染しやすい?

 最近発表された複数の研究論文(査読前の段階)は、英国で確認されたSARS-CoV-2の変異株は他の株よりはるかに広がりやすいと結論付けている。

 英政府の疾病対策諮問機関「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(NERVTAG)」は、変異株は従来の株より50〜70%感染しやすいという見解を示している。

 インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らは先週、昨年10~12月に英国で確認された数千症例のSARS-CoV-2遺伝子配列の解析結果を発表。新たな変異株は、変異していない株と比較して増殖率が0.4~0.7倍高く、「かなりの感染の優位性」を持っていることを明らかにした。南アフリカの変異株についての予備的研究でも、従来のSARS-CoV-2より感染しやすいと結論付けられている。

 一方で、専門家らは注意を喚起している。

 フランス公衆衛生局(Sante Publique France)感染症部門トップのブルーノ・コワニャール(Bruno Coignard)氏はAFPに、英国の変異株が広がった要因はいくつかあるとして、「ウイルスの特徴だけではなく、(各国で)実施されている予防・抑制策も関係している」と指摘した。