■偽「救助」

 インドネシアの漁師らは当初、6月に初めてロヒンギャ約100人が乗った船を救助したと主張していた。

 だが彼らが主張する「救助」は、実際にはより厳格なマレーシアの入国管理を回避するための密航業者らによる組織的行動だったことが、当局や関与した密航業者によって明らかになっている。

 インドネシア当局によれば、密航業者はいったんインドネシアに入ってしまえば、狭い海峡を横断してロヒンギャをマレーシアに上陸させられると思っている。

 だが大半の難民は、インドネシア当局がスマトラ島北部ロクスマウェで校舎だった建物2棟に用意したキャンプに留め置かれる。

■同情心と欲

 バングラデシュの難民キャンプ内でロヒンギャを密航ネットワークへの関与に駆り立てているのは、同情心と絶望感、そして欲が混じり合った複雑な感情のようだ。このネットワークはまた薬物の違法取引ともつながっている。

 この地域は東南アジアで人気がある「ヤーバー」と呼ばれる安価なメタンフェタミンの中心的な生産地として知られている。

 ムハンマドという名だけを明かした男性(25)はAFPに対し、バングラデシュの最も古い難民居住区の一つで生まれ、ロヒンギャの犯罪組織のボスの下で14歳から働き始めたと語った。

「彼の下で2年間働き、この難民キャンプの狂気から逃れて、マレーシアに行きたがっていた少なくとも200人のロヒンギャを集めることができた」。そうした難民を見つけることで一月当たり550ドル(約5万6000円)を受け取っていたという。

 ムハンマドさんは、ボスがバングラデシュの治安部隊に射殺されてから何年間か違法行為からは遠ざかっていたが、もう一度、この稼業に復帰する道を探っている。「ここで空きが見つからなければ、自分自身の(外国の)つながりを使って始めるつもりだ」と、ムハンマドさんは稼ぎのもくろみについて語った。

 だがバングラデシュのコックスバザールで密航に関与する他のロヒンギャは、自分たちは道徳的義務からやっていると語った。

 三輪タクシーで検問所を通り、小型船に乗せるまでを受け持っているモハンマド・タヘル(Mohammad Taher)さん(34)は、「これは共同体の福祉活動であって、犯罪ではありません」と語った。「この地獄から出たいと願う人がいれば、良識ある兄弟として、出口を示してあげるのが自分の義務だと思っています」 (c)AFP/Sam Jahan, with Haeril Halim in Lhokseumawe, Indonesia and Peter Brieger in Jakarta