夢を売り、暴力と恐喝で支配 ロヒンギャ密航ビジネス
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■脱出
バングラデシュの難民キャンプ脱出は、2000ドル(約20万円)相当の前金の支払いで始まる。支払いはマレーシアにいる夫や親類が、携帯電話からネットバンキングのアプリを使って行うことが多い。前金を払うと難民本人に電話がかかってくるが、通常は知らない人物からだ。
マレーシアにいるロヒンギャ男性と、ビデオチャットアプリを通じて結婚したジュレカ・ベグム(Julekha Begum)さん(20)は、「数日後に電話がかかってきて、男性にキャンプの中央食品市場にある三輪タクシー乗り場に行くよう指示されました」と語った。
密航業者に雇われた三輪タクシーの運転手らは難民を連れて、有刺鉄線が張り巡らされたいくつかの検問所を通る。治安部隊は通常、賄賂を受け取り、通行を許す。
AFP記者が海岸沿いに確認した数か所の出発地点までは、三輪タクシーで数時間かかる。そうした港からは夜になると数千隻の漁船が漁に出る。
ロヒンギャの人々は定員10人余りの小型船がいっぱいになるのを待ってから、はるか沖合の大型船に連れて行かれる。時に1000人の収容が可能な2階建ての大型船のこともある。ひとたびマレーシアに向かい始めると、小型船が定期的に食料や水を運んで来る。
AFPが取材したロヒンギャの人々は、約4000キロ離れたマレーシアに到着するのは、1週間後だと言われたと語った。だが実際には、首尾よくいっても数か月かかる。
インドネシアに到着した難民らの話によると、船上では暴力や虐待があり、食料の配給は飢えるほど少なく、船上の難民を人質にとって親類からさらに金を脅し取る行為もあった。つまりは身代金を要求する脅迫で、親類が追加で支払った何人かは最終目的地に向かう小さな船に移されたという。
9月に上陸したアスモット・ウラー(Asmot Ullah)さん(21)は、密航業者らは「親類が払わなかったり、それ以上払えなかったりすると、いつも船の上の難民を殴っていました」と語った。
モハンマド・ニザーム(Mohammad Nizam)さん(25)は金がないために、マレーシア行きの小型船に乗せられはしなかったという。「彼ら(密航業者)は前もって合意していた金額から、さらに多く要求してきました。けれど私の両親は払えなかったのです」とニザームさん。「余分に払えば、マレーシアに(真っすぐ)行かせてもらえるのです」
当局によると、定員1000人の船1隻で、密航業者は最大300万ドル(約3億円)を稼げるという。