■今は「様子見」

 ただ、どの都市が移転先として有利になろうとも、香港からの企業流出が起こり得るかをめぐっては疑問が残る。

 英経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)氏はAFPに対し、「大企業が香港からの完全撤退を発表するとは予想していない」「企業は香港で段階的に人員を削減し、それ以外の場所で増員する可能性の方が高い」と話した。

 また、金融サービス企業「AxiCorp」のグローバル市場チーフストラテジスト、スティーブン・イネス(Stephen Innes)氏は、表現の自由をめぐる不安があっても、香港は投資家や金融サービス企業にとって「中国本土への第一の玄関口」であり続けると述べた。

 欧米系大手銀行の香港駐在社員は、匿名を条件にAFPの取材に応じ、「全般的な姿勢は様子見だ」と語り、移転については個人的にはまだ念頭にないと話した。

 イネス氏は、シンガポールなどのアジア地域の経済拠点が企業誘致を図る際に中国の反発を警戒する可能性もあると話し、「(中国への)恩をあだで返すことを望む人はこの地域にはいない」と指摘した。(c)AFP/Etienne BALMER