【11月13日 東方新報】来年元旦から施行される民法典の「相続法(継承法)」で、デジタル遺産はまもられるのか。最近、デジタル遺産の相続問題がネットで話題をよんでいる。

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 スマートフォンの微信(ウィーチャット、WeChat)に残っていた微信支付(ウィーチャットペイ、WeChat Pay)や支付宝(アリペイ、Alipay)の残金、オンラインゲームで獲得したポイントやアイテムは、ユーザーが亡くなったあと、どうなるのだろうか大量フォロワーのついたSNSのアカウントや、その中に残る大量の個人情報データは誰のものだろうか?インターネット大国、クラウド大国でいきる中国人にとって切実なテーマになりつつある。

 新華社(Xinhua)によると、昨年、ある90年代生まれのeスポーツ選手が、自分の保有するアリペイや、ゲームアカウントのデジタル資産の相続について遺書に書きいれたことが、ネット上で話題になった。2018年には、あるドイツ人夫婦は亡くなった娘のSNSアカウントを合法的に相続している。2009年には中国でデジタル遺産の相続権をめぐる司法案件が発生。故人はネットゲームで5万元(約79万円)相当のアイテムを保有していたという。

 デジタル遺産相続の問題は2003年にすでに存在が判明していた。国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の中で「デジタル遺産は人類特有の知識や表現方法であり、テキスト、データベース、写真、ソフト、ウェブページなどネット上の個人情報を含めすべてデジタル遺産となる」と明示している。

 上海正策弁護士事務所の董毅智(Dong Yizhi)弁護士が新華社の取材に答えて次のように解説している。

 デジタル遺産は、SNSのアカウントおよび発信情報、銀行カードなど伝統的財産とひもづけられているペイメント機能付きアカウント、ビットコインなどのバーチャル資産の3つに分類されている。異なるデジタル遺産の相続は、はその特性や処理の仕方も異なり、具体的状況をみながら異なる対応をする必要があるという。

 中南財経政法大学(Zhongnan University of Economics and Law)デジタル経済研究院の盤和林(Pan Helin)院長は「デジタル遺産をどのように処理するか、これはネット上のデジタル資産の所有権が誰に帰属するかの問題となる。法律の概念からいうと、デジタル資産の本質は人格権と財産権という二種類の権益を包括する。インターネット時代、個人情報などに代表される人格権が主体に客観的経済利益をもたらし、財産権はさらに直接にデジタル資産と関係する。このため、それぞれの権利がいかに相続されるべきかという問題ある」という。

 では主要なインターネットプラットフォームは実際どのように処理しているのだろうか。

 中国で一番普及している電子マネー・アリペイについては、同社の担当者によれば、ユーザーがアプリ内に持っているアリペイはユーザー本人にのみ所有権があり、たとえユーザーが死亡しても、その電子マネーおよびそれによって生じる収益は、遺産相続人が受け取りにくるまでユーザーにかわって、アプリ会社が保管し続けるという。またアリペイで購入した基金や保険などの産品も、「花唄」(Huabei)「借唄」(Jiebei)のようなクレジットローンなども同様に扱うという。

 類似の電子マネーや派生商品についても、親族が身分証などで故人との関係を示し、死亡証明や承諾書などをカスタマーサービスに提供し、法律に基づいて遺産相続することになる。では、法律に明確な規定のないアカウント情報、例えば大量のフォロワーがついたSNSアカウントなどはどのように扱われるのだろうか。

 QQやウィーチャットなど中国のSNSアカウントの使用権は最初の登録者にのみ与えられ、贈与、借用、貸与、譲渡、転売は禁止されている。またアカウントのすべての所有権は親会社の騰訊(テンセント、Tencent)に帰属しており、もしユーザーがアカウントを長期に使用していなかったりすると、テンセントがアカウントを回収し処理することができる。

 新浪微博はこのほど死亡者のアカウント保護に関する声明を出した。それによると死亡者のプライバシーを保護し、死亡者のアカウント盗難防止のために、微博(ウェイボー、Weibo)はユーザーが死亡したのちは、そのアカウントを保護状態に置き、ログイン、投稿、内容の削除ができないようにする、という。死亡者の親族がアカウント情報を相続した場合、ログインはできるが、投稿や転載を行ったりコメントをつけたり「イイネ」をつけたりすることも制限されるという。

 ただ、こうしたSNSアカウントに対する運営会社の規定は暫定的なもので、将来的には国家としての法の整備を待つ必要があるという。

 2020年5月に発表された「民法典・相続編」では、遺産の範囲を具体的に列挙して示していた従来の相続法の記述は削除され、「遺産とは自然人が死亡した時に残した個人の合法的財産」という定義のみに改められた。

 この定義によれば、アリペイ、ゲーム用コイン、ナレッジ有料アカウント、SNSアカウントなどをふくめ、すべてのデジタル資産が遺産相続対象となる。ただ実際のところ、こうしたデジタル遺産相続は、個人情報の具体的相続権が誰にあるか、という倫理的な問題にもかかわり、実際の状況に応じて最適の方法を模索し続けるしかなさそうだ。やはり一番よいのは、デジタル資産については生前から自分で整理し、自分に万が一のことがあった場合は、どのように処分するか、誰に相続するか遺書にしたためておくことだろう。(c)東方新報/AFPBB News