【6月15日 東方新報】先月行われた全国人民代表大会で中国初の民法典草案が審議、裁決され、成立した。法典と命名される法律が制定されるも中国にとっては初めて。7編と付則計84章1260条の膨大な法律集は、人民の社会生活百科全書、民事権利保障の宣言書ともいえ、社会の変化の中で多様化する個人の権利を保障する法律が全方位的に網羅されている。

 法典は、民法総則と物権編、契約編、人格権編、婚姻家庭編、継承(相続)編、真剣責任編、付則から構成されている。土地の権属制度、遺産相続の帰属、個人のプライバシー保護はもちろん、高所から物を放り投げることの違法性や隣人とのトラブル、婚姻問題、セクシュアルハラスメント問題といった庶民の暮らしにかかわる問題についての規則、法的判断基準が盛り込まれている。この民法典は2014年11月の第18期四中全会で成立が提案されて後、編さんされた。この数年の間、インターネットを通じて10度にわたりパブリックオピニオンが募集され、SNS、人工知能の発達に伴って急激に社会が変化した時代の人々の訴求を鮮明に反映した法律集となっている。

 例えば昨年から人工知能(AI)による顔のコラージュソフトがSNSで大人気だ。このソフトはユーザーが提供した顔写真を動画のスターやタレントの顔と付け替えることができる。だが、多くのネットユーザーは顔写真情報が違法に集められたり、盗用されたり、乱用されるリスクも懸念している。民法典はこういった問題について、人格権編の中で、いかなる組織・個人も、他人の肖像権を醜悪化、汚損、あるいは情報技術を利用しての偽造などの方法で侵害してはならない、と規定している。

 またAIの発展に伴い、人の「声」も日ごとに重要性を増しているが、やはり人間の声に対する保護も、肖像権保護の規定が応用されるように決められている。特に電子契約が音声で行われることについても、民法典の契約編で明確に規定されているなど、現代の情報化文明時代の特徴を反映した法典となった。

 法典総則編では、オンラインゲームで売買される装備やポイント、仮想財産などについて、法律保護の範囲に入れると明記されており、データやネットのバーチャル財産の保護規定も設けられた。また、未成年に対するセクハラの時効は満18歳からカウントされるといった規定も。つまり未成年に受けたセクハラについて18歳になってから訴訟を起こすことも可能ということだ。

 さらに継承(相続)編では新たに遺言の形式についても柔軟に多様化がみとめられた。現行法では自筆の書面の遺言、あるいは代書遺言、録音遺言、口頭遺言しか認められておらず、印字の遺言やビデオの遺言については規定がなかった。だが、民法典では印字の遺言もビデオ録画遺言も遺言形式に含まれるようになった。

 婚姻家庭編では、協議離婚の登録について申請後一か月の間にどちらかが意志を変えれば離婚を撤回できる離婚冷静期を設ける規定が盛り込まれた。若い世代の電撃結婚や離婚の繰り返しが急増している社会状況に応じた条項だ。

 中国人民大学(Renmin University of China)法学院の王軼(Wang Yi)院長は「中国の特色ある社会主義法治津体系がさらに管制される重要な一里塚、国家の法治体系と統治能力の現代化レベルを大きく引き上げた」と民法典成立の意義を語っている。(c)東方新報/AFPBB News