■米中貿易のもつれ合い

 米シンクタンクのアメリカンエンタープライズ研究所(American Enterprise Institute)のレジデント・フェロー、カイル・ポメルロー(Kyle Pomerleau)氏は、富裕層への増税による短期的な利得は、最終的には企業活動を抑制し、刺激策がもたらす恩恵を損なうことになると警告する。

「バイデノミクス」の他の政策には、1兆3000億ドル(約140兆円)のインフラ投資、最低賃金の時給15ドル(約1600円)への引き上げ、有給の介護休暇や育児休暇の拡大、米国内製造業の後押しとなる「バイ・アメリカン」政策などが含まれている。

 トランプ氏が米政府を中国との貿易戦争に巻き込んだ後、バイデン氏が米国の通商関係にどう対処すべきかについて、民主党内はほとんどまとまっていない。

 投資銀行のJPモルガン(JP Morgan)は、バイデン氏はおそらく国内政策の遂行に集中した後で貿易問題に取り組むことになるため、中国政府との緊張を緩和した今年の貿易合意「第1段階(フェーズ1)」をすぐに変更することはないだろうと言う。

 JPモルガンは報告書で「バイデン政権は中国との技術面でのつながりを引き続きデカップリング(分断)するだろうが、それは国内および国際的ルール作りの枠組み内で系統的に行われるだろう」と述べている。

■立ちはだかる財政赤字

 バイデン政権の前にさらに立ちはだかるのは、2020会計年度(19年10月~20年9月)で3兆1000億ドル(約330兆円)に膨れ上がった財政赤字だ。

 オバマ政権に協力したデュガン氏は、トランプ政権下で可決された減税が、コロナ以前に赤字を悪化させていたと非難すると同時に、高所得者への増税も十分ではないだろうと認めた。

 ポメルロー氏は、トランプ氏による減税の一部は2025年に期限切れとなるため、民主党が対共和党交渉の決め手を得られる可能性があるが、上下院が分断したままであれば、バイデン政権下で多くの変化が起きる望みは少ないとしている。

「(バイデン氏が)上院で多数を取らなければ、何においても多くがうまくいかないように思われる」(c)AFP/Chris Stein