【11月9日 AFP】エチオピア連邦政府軍と北部ティグレ(Tigray)州政府与党の勢力との軍事衝突が5日目を迎える中、アビー・アハメド(Abiy Ahmed)首相は8日、陸軍トップのアデム・モハメド(Adem Mohammed)参謀長を更迭した。理由は明らかにしていない。政府軍に100人近い負傷者が出ているとの情報があり、戦闘は激化しているもようだ。

 陸軍参謀長の後任にはベルハヌ・ジュラ(Berhanu Jula)副参謀総長が任命された。アビー首相はまた、外相と連邦警察長官も更迭し、ティグレ州の南に隣接するアムハラ(Amhara)州の州大統領を情報庁長官に任命した。

 アムハラ州北部の道路沿いでは、負傷した兵士を病院へ搬送する救急車が忙しく行き来している。現地の医療関係者は、銃撃で負傷した兵士約100人が病院で治療を受けたとAFPに語った。

 昨年ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞したアビー首相は、軍事行動に出たのはティグレ州の与党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」が国家の不安定化を狙っているからだと述べ、国際社会に理解を求めた。

 アビー氏は、自身が推進する民主主義体制への移行プロセスを「頓挫(とんざ)させるための暴力的な違法行為に進んで関与するあらゆる勢力」に対し、TPLFが「資金を提供し、戦闘員を訓練し、武装を支援していた」と主張した。

 一方、ティグレ州のデブレチオン・ゲブレミカエル(Debretsion Gebremichael)州大統領はテレビ演説で、アフリカ連合(AU)に「エチオピアが内戦に陥らないよう役割を果たす」ことを求めた。

 北部での戦闘をめぐっては、アビー氏と政府軍幹部らが政府軍の優勢を主張している一方、ティグレ州政府は「戦闘機」を撃墜したと発表した。だが、ティグレ州ではインターネットや電話の回線が遮断されているため、いずれも裏付けは取れていない。

 TPLFは、2018年にアビー氏が首相に就任するまで約30年間にわたりエチオピアの主流派だった。だが、アビー政権下ではティグレ人の指導者らが不当な汚職捜査の標的にされ、政治の中枢から排除され、さまざまな国内問題の責任を押し付けられているとして不満を募らせてきた。両者の対立は9月、アビー首相が新型コロナウイルス流行を理由に総選挙を延期したことにティグレ州政府が反発し、独自の選挙を実施したことでいっそう悪化した。

 国連(UN)は7日、両勢力にティグレ州への人道支援受け入れを要請。同州には難民10万人近くとエチオピアの国内避難民10万人が暮らし、食料支援に頼って生活している人が約60万人に及ぶと指摘し、中でもティグレ州の境界付近では約900万人が「今回の武力衝突で高い危険にさらされている」と警告した。(c)AFP/Robbie COREY-BOULET