【11月6日 AFP】女性の居場所が家庭であったことは、そもそもなかったかもしれない──このような研究が4日、科学誌「サイエンス・アドバンシス(Science Advances)」に発表された。

 論文を発表した米カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)のランドール・ハース(Randall Haas)氏率いる研究チームによると、ペルーのアンデス山脈(Andes)で、9000年前の若い女性の遺骨が、大物狩りの道具一式とともに発見された。

 研究チームが、同様の道具とともに埋葬地で発見した27人の遺骨を詳細に解析した結果、同時代の米大陸の狩猟者の30~50%は女性だったとの結論に至った。これは、狩猟採集民社会において、狩猟者は主に男性で採集者が主に女性という、一般的に考えられてきた説とは相反している。

 ハース氏はさらに、この結果は「今日の労働慣行における格差、すなわち男女の賃金格差や肩書、地位などの格差を浮き彫りにしている。この結果は、実際はこれらの格差には何ら『自然』なことはないかもしれないことを明確に示している」と指摘する。

 ペルー高地の重要な考古学的遺跡「Wilamaya Patjxa」で2018年、ハース氏と地元住民らは、狩猟者2人を含む6人の遺骨を発見した。

 狩猟者2人の骨の構造および歯のエナメル質のペプチドと呼ばれる生体分子を分析したところ、2人のうち1人は17~19歳の女性で、もう1人は25~30歳の男性であることが確認された。

 発掘が進む中でハース氏らは、大型動物を仕留めるための先端をとがらせた石器、内臓を取り出すための石の刃物や破片、皮をはぎ、なめす道具といった、一連の狩猟および獲物の処理加工道具を発見。それが、その女性が狩猟者であることを示す強力な証拠となった。

■例外ではない

 女性狩猟者が異例の存在なのか、あるいは大勢いるうちの一人なのかを調べるために、研究チームは1万7000~4000年前の米大陸の107か所に埋葬された429人について再調査を行った。

 性別が確定しており、大物狩りの道具とともに埋葬されていた27人が見つかり、その内訳は男性16人、女性11人だった。

 研究チームは統計モデルを用いて当時の社会での狩猟者の30~50%は女性だったと推定し、「そのサンプルによって十分に裏付けられる結論は、初期の大物狩りへの女性の参加は重要なものだったということだ」と論じている。(c)AFP/Issam AHMED