【11月3日 AFP】米国の問題は「私にしか解決できない」──2016年、米大統領選で共和党候補指名を受諾した不動産王のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、こう断言した。

 だが、就任演説で「米国の惨状」を終わらせると誓った同氏は今日、自らが中心となって混乱を生み、1970年代以降、最も無秩序な状態に陥ったこの国を再建するどころか、破壊していると多くの人々が非難の声を上げている。

 米国では、新型コロナウイルス感染症による死者が(日本時間11月2日時点で)23万人を超え、ロックダウン(都市封鎖)で何百万人もが経済的苦境に陥っている。人種差別の傷は、抗議デモが広がった夏の間にいよいよ悪化し、首都ワシントンでは共和党・民主党の議員同士が中傷合戦を繰り広げている。

 トランプ氏自身も無傷だったわけではない。

 コロナ危機を軽視し続けた末、大統領選の1か月前に新型ウイルスの陽性結果が出て入院。医師から後に「非常に悪い状態に向かいつつあった」と告げられたことを明らかにした。今は元気になったようだが、支持率は低下した。

 米国史上、弾劾訴追された大統領は3人だけ。そのうちの一人がトランプ氏だ。さらに、税金逃れからレイプ、性的暴行の訴えに至るまで、さまざまな問題で法的追及を受ける立場に置かれている。

 大統領に就任するとたちまち、自身が所有するそびえ立つガラス張りの高層ビルさながらにワシントンの主流派を威圧し、「ナショナリスト印」を手当たり次第あらゆるものに押しまくった。そして、抵抗勢力が阻止しようとすればするほど、それをバネにしぶとさを増していったようにみえる。

 2016年の大統領選におけるロシア介入とトランプ氏の選挙陣営とのつながりに関する捜査は、2年もの異例の長さに及び、問題行動があったことを裏付けるものとはなったが、尻すぼみに終わった。

 そして昨年、民主党が弾劾手続きを開始すると、かつては出馬すら必死に止めようとした共和党は徹底的に援護射撃し、トランプ氏はあっけなく無罪放免になった。