【9月17日 AFP】世界有数の毛皮生産国ポーランドの議会で16日、毛皮用の動物飼育を禁止する法案が採決に掛けられた。動物愛護団体の支持する法案は、イスラム教の戒律にのっとって食肉処理されたハラル肉やユダヤ教の律法で認められたコーシャ肉の輸出停止も定める内容で、首都ワルシャワでは毛皮農家やコーシャ肉生産者らが抗議デモを行った。

 動物愛護団体によればポーランドは、中国とデンマークに次いで世界第3位の毛皮生産国だ。また、イスラエルや欧州域内のユダヤ人社会向けのコーシャ肉の主要輸出国でもある。

 与党「法と正義(PiS)」のヤロスワフ・カチンスキ(Jaroslaw Kaczynski)党首は先週、法案の審議入りに当たって「ポーランドの動物に関する基準は、他の欧米諸国と比べて劣っていてはならない。むしろ、より高くあるべきだ」と述べた。同氏は愛猫家として知られる。

 16日の採決に先立ち、マテウシュ・モラウィエツキ(Mateusz Morawiecki)首相は「21世紀には、毛皮の服を着なくても見た目をとても良くすることが可能だ」と訴えた。

 その後の採決で法案は否決され、さらなる検討を行うため議会委員会に送付された。

 ポーランドの動物愛護団体によると、国内では約550の毛皮農場で約520万匹の動物が飼育されている。

 しかし、今回の法案をめぐってはPiSの主要支持基盤である農村地域から批判の声が上がり、16日のデモでは毛皮農家らが「カチンスキ、農村地域の裏切り者!」とシュプレヒコールを上げた。

 日刊紙ガゼタ・ビボルチャ(選挙新聞、Gazeta Wyborcza)は、法案が可決・施行されれば経済的打撃は約16億ユーロ(約2000億円)に上るとの専門家の見解を報道。ポーランド食肉協会(Polish Meat Association)も、「法案は経済的に有害」で食肉加工労働者や農家、農村地域の住民の生活を脅かすと懸念を表明していた。(c)AFP