【8月31日 AFP】米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)の創業者イーロン・マスク(Elon Musk)氏は28日、自身が立ち上げた新興企業「ニューラリンク(Neuralink)」が開発中の脳とコンピューターをつなぐ技術の成果を発表し、このデバイスは人間の将来には欠かせないものになると述べた。

 マスク氏は以前から、人間は今に人工知能(AI)に追い越され、最良の状態では「飼い猫」のようなペット同然の存在になるだろうが、そうした事態を避けるには、脳とコンピューターを融合させる「ニューラル・レース」と呼ばれる技術が不可欠だと主張してきた。

 マスク氏はプロジェクトについて、「実存的脅威の観点から重要になる」と説明。「これが私が考える、このようなデバイスを開発する最も重要な意義かもしれない」

 ニューラリンクのプロジェクトチームが実現を目指している「ウィッシュリスト」には、体の一部がまひしている人々に運動能力、そして目の不自由な人に視力を取り戻す技術や、テレパシー、後で参照するために記憶のアップロードを可能にする技術などが含まれている。

「将来、記憶を保存し、再生できるようになると思う」とマスク氏は述べている。

 ニューラリンクのプロジェクトチームは現在、ブタを使って臨床実験の可能性を模索している。

 今回のデモンストレーションには、囲いに入れられた3匹のブタが登場。ガートルードと名付けられた1匹には、鼻の神経活動を示す活動電位のスパイク波を検出するためにニューラリンクが開発したデバイスが埋め込まれているとの説明だったが、ガートルードは食べ物に夢中で、イベントのために集まっているマスク氏らを気にする様子もほとんど見せなかった。

 マスク氏によると、デバイスの最初のバージョンを1年あまり前に公開したが、あれからデバイスはさらにシンプルなものになり、サイズは大きめのコイン、厚さは頭蓋骨程度になったという。

 デモンストレーションでは、外科手術用ロボットを使いながら、頭蓋骨の一部をニューラリンクのディスクに置き換え、細いワイヤを巧みに脳に挿入する様子が公開された。マスク氏の説明によれば、このディスクは神経活動を認識し、一般的なブルートゥース(Bluetooth)のワイヤレス信号を介してスマートフォンなどのデバイスに情報を伝達する。