■政治問題化するマスク着用

 さらにマスク着用が政治問題化していることについて尋ねられると、「このような不和がなければ、もっと協調的なアプローチができただろうと考える」と答えた。

 米保健当局は春ごろ、新たなデータによりマスク着用が有効だとの証拠が示されたとし、それまでの見解を変え、マスク着用を推奨するようになった。しかしトランプ氏は、過去数か月にわたりマスク着用を拒否。顔を覆うことは自由への侮辱であり、恐怖をかき立てるための陰謀だとさまざまな場面で繰り返した。

 ホワイトハウス(White House)は最近、メディアにパンデミック対応においてファウチ氏は常に「間違っていた」と非難する文書を寄稿するなど、ファウチ氏批判を繰り返していた。

 一方ファウチ氏は米女性ファッション誌インスタイル(InStyle)に対し先週、「私が素晴らしい働きをしていることは、誰もが評価していると思う」とし、NIAIDで新型コロナウイルスのワクチン開発を主導していることもあり、少なくともNIAIDの職についてはトランプ氏は自身を解雇できないとの見解を示した。

 だが両氏の対立が深まるにつれ、トランプ氏がファウチ氏を解任するのではという臆測が広がっている。

 米キニピアック大学(Quinnipiac University)が15日に発表した世論調査によると、米国民の65%がファウチ氏を信用すると答えており、同氏が超党派の信頼を集めていることが明らかになった。

 しかし、両氏は緊張を緩めようとしているようだ。

 ファウチ氏は米誌「アトランティック(Atlantic)」に対し、自身を批判するトランプ氏らの試みは「奇妙」だと指摘。「そんなことをすると、最終的に大統領を傷つける」と述べた。

 一方、トランプ氏はこれを受け報道陣に対し、ファウチ氏とはうまくやっており、自らのスタッフが取った行動は彼らが独自に判断したものだと説明した。

 今のところ、関係は改善されたようだ。(c)AFP/Issam AHMED