【7月21日 AFP】米国の感染症の権威、アンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)氏(79)は、米国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)抑制に失敗したと指摘するその正直さゆえに、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領との対立を深めている。

 米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長で、医師そして科学者でもあるファウチ氏は、1980年代以降の米国の感染症対策を率いてきた実績があり、特にエイズウイルス(HIV)治療研究で高い評価を得ている。新型コロナウイルスについての率直な発言のおかげで、今日、ファウチ氏はかつてないほど注目を集めている。多数のファンを獲得し、同氏のTシャツや人形を購入する人もいるほどだ。

 ファウチ氏は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の初期段階で、上司であるトランプ氏の大言壮語に対し公には逆らわずかつ抵抗するという繊細な技を習得した。しかし、このような外交術を保つのは難しくなっているようだ。

 ファウチ氏は6月2日以降トランプ氏と顔を合わせていないと述べたほか、同氏の知名度を高めた政府の新型コロナウイルス対策タスクフォース(作業部会)の記者会見にも最近は姿を見せていない。

 なぜだろうか。

 新型コロナウイルスの勝利宣言をし、経済を復活させたとして大統領選での再選を果たしたいトランプ氏は、各州での活動再開は時期尚早で危険だとするファウチ氏の警告を受け入れられないようだ。

 世界で最も新型コロナウイルスの深刻な影響を受けている米国の死者は、14万人を超えている。6月中旬以降、新規感染者数が急増しており、感染の中心地はカリフォルニア州、テキサス州、アリゾナ州、フロリダ州に移っている。

 ファウチ氏は7月上旬、「米国と他国を比較し、国としてわれわれがよくやっているとは思えない」と、政治ニュースサイト「ファイブサーティーエイト(538、FiveThirtyEight)」に語った。