【7月16日 AFP】米国で新型コロナウイルス感染拡大の勢いに衰えが見えず、11月の米大統領選での再選への道のりに暗雲が漂い始めたドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領(74)は、四方八方から打ちのめされている現状から脱却しようとますます必死になっているようだ。

 トランプ氏は15日夜、大統領選まであと4か月というタイミングで、ブラッド・パースケール(Brad Parscale)選対本部長の解任をツイッター(Twitter)で発表した。この日発表された2つの世論調査で、支持率の低迷が改めて浮き彫りになった後のことだった。

 同時に、今回の大統領選は2016年より「はるかに簡単だろう」と楽観的な見解を表明。「わが陣営の世論調査の数字は急上昇しているし、経済も改善している。ワクチンや治療薬も、もうすぐだ。米国人は安全な街や地域社会を望んでいる!」と投稿した。

 だが、現状は厳しい。米国では新型コロナウイルス感染によりこれまでに13万6900人が死亡し、全米50州のうち40州で新規感染者数が増えているなど、感染状況の推移は欧州とはまるで異なり、悪化の一途をたどっている。

 それにもかかわらず、トランプ氏は新型コロナに関する問題を避けているように見える。14日の記者会見では中国を非難し、大統領選を争う民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(77)をけなしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行対策についてはほとんど触れなかった。

 15日には米疾病対策予防センター(CDC)のあるアトランタ(Atlanta)を訪問したものの、CDCに立ち寄って感染状況に関する説明を受けることはなく、インフラ改善をテーマに演説しただけだった。

■目立つファウチ氏攻撃、責任転嫁と批判も

 一方、米政府の感染対策のつまずきを率直に指摘した米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長の信用を失墜させようとするトランプ氏の試みは、失敗した。共和党内からも、責任を転嫁せず新型コロナ問題に真剣に取り組むよう大統領に要求する声が上がっている。

 トランプ氏とホワイトハウス(White House)はここ数週間、ファウチ氏への批判を繰り返している。ファウチ氏は米誌「アトランティック(Atlantic)」に、トランプ氏らの試みは「奇妙」だと指摘。「そんなことをするのは、最終的に大統領を傷つける」と述べた。

 この騒動に、バラク・オバマ(Barack Obama)前米大統領も介入。「最新のデータは、ウイルスは政治的な情報操作やイデオロギーには無頓着だという悲惨な事実を思い出させてくれる」「米経済のため私たちができる最善は、公共衛生の危機に対処することだ」とツイッターに投稿し、政治とは切り離した行動をとるよう訴えた。

 オバマ政権で副大統領を8年務めたバイデン氏は、選挙活動を最小限にとどめており、有権者の前に姿を現したのは数回きりだが、トランプ氏の空回りにつけ込む形で支持率を伸ばしている。

 15日発表の米キニピアック大学(Quinnipiac University)による世論調査では、トランプ氏の支持率は36%に沈み、バイデン氏が15ポイントもリードした。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RealClearPolitics)」の全米世論調査でも、バイデン氏はトランプ氏を9ポイント引き離した。

 バイデン氏は大統領選の結果を左右するとされる接戦州の支持率でも、アリゾナ、フロリダ、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの5州でトランプ氏を上回っている。(c)AFP/Jerome CARTILLIER