【7月2日 AFP】イタリアのある自治体では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された人の40%以上が、病気の症状を何も示さなかったとする研究論文が6月30日、発表された。ウイルス感染が拡大する過程において、無症状感染者の存在が重要なかぎとなっていることを示唆する結果だという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された今回の研究について、論文の執筆者らは、新型コロナウイルスの集団感染(クラスター)を封じ込める上で、検査と隔離がどれほど重要となるかを浮き彫りにしていると話す。

 人口3200人の伊ボー(Vo)市では2月下旬、同国内で新型コロナウイルスによる初の死者が確認され、直ちに2週間のロックダウン(都市封鎖)が実施された。この間に研究者らは、85%以上の市民を対象にCOVID-19の検査をすることができた。

 検査の結果、隔離策の初期段階ではボー市内の感染者の割合は2.3%だったのに対し、ロックダウン終了時は1.2%で、また検査で陽性だった市民の40%以上が無症状であることが明らかになった。これについて研究者らは、患者の隔離と集団検査の迅速な実施によって、ボー市からウイルスを効果的に排除できたことを研究結果は示していると指摘する。

 伊パドバ大学(University of Padua)分子医学部と英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)生命科学部に所属するアンドレア・クリサンティ(Andrea Crisanti)氏は「症状の有無にかかわらず、全市民を対象に検査を実施することで、感染症の拡大に対処し、流行が手に負えなくなる事態を防ぐための手段が得られる」と説明している。

 クリサンティ氏の研究チームはまた、無症状の病原体保有者が、症状を示す患者と同様のウイルス量を持つことも明らかにした。これは、自身に自覚症状がない間にもウイルスを拡散させる可能性があることを示唆している。

 他方で今回の研究では、COVID-19検査で陽性反応が出た大人と同居していた10歳未満の子どもでは、一人も陽性反応が確認されなかったことも分かっている。(c)AFP/Patrick GALEY