外出制限で増える無料コンテンツ、文化産業への脅威に 国連機関が警告
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【5月1日 AFP】新型コロナウイルスの広がりに劣らない速さで、書籍や映画、コンサートなどの無料コンテンツが続々と登場し、外出制限で家にとどまる人たちのつらさを和らげている。しかし、国連(UN)の世界知的所有権機関(WIPO)は4月28日、無料コンテンツによってもともと脆弱(ぜいじゃく)だった文化産業が脅かされていると警告した。
新型コロナウイルスの拡散を阻止するために、世界中でイベントの中止や集会の禁止、何十億人もの人々に家にとどまるよう求めるなど、対人距離を確保するための厳格な措置が取られている。そうした中、オンライン上ではあらゆる無料の文化コンテンツが見られるようになっている。
一部のコンテンツ制作者は自ら進んで、自分の芸術作品を無料で利用できるようにしている。だがWIPOのフランシス・ガリー(Francis Gurry)事務局長は、知的財産権の例外を認め著作権を無視するよう文化部門に求める要求が多数舞い込んでいることに懸念を示した。
WIPOの知的財産権規則は文化物の著作権について、書籍や出版物、その他の制作コンテンツへのアクセスを容易にする例外を、特定の状況および条件の下で認めている。
しかし、ガリー氏はAFPとのインタビューで、世界中で21万人以上が死亡している感染症の流行を理由に、博物館の展示やオペラ、バレエ、コンサート、出版物などを無料で公開することを正当化していいのかとの疑問を呈した。
ガリー氏は「われわれはもっと慎重にならなければいけない」と指摘する。そうした動きによって、元から脆弱であった文化部門のプロたちの収入が劇的に減っているからだ。「著作権を放棄するには、そこに特別な必要性があることを証明しなければならない」
さらにガリー氏は現状では、「コンテンツへのアクセスに問題があるという証拠はあまりない」と述べ、書籍や音楽などの商品をオンラインで購入することは今でも可能だと指摘した。
一方、コロナ危機によって多くの文化分野で収入源が完全に失われ、コンテンツ制作者たちは大きな打撃を受けていると同氏は警告している。例えば映画産業では普段、1本の映画制作に何百人もが関わっているが、現在ではほぼ活動が止まっている。