【4月29日 AFP】重症化した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にみられる過剰な炎症反応の抑制に対して、関節炎の治療薬「トシリズマブ」が有用である可能性が出てきた。フランスで行われている臨床研究の初期段階で有望な結果が示された。

【図解】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の探究

 仏パリ公立病院連合(AP-HP)が行った今回の研究では、COVID-19患者の5~10%で発症する中度から重度のウイルス性肺炎で入院した129人を調査した。

 調査対象者の半数にはトシリズマブ注射2回と抗生物質による標準的な治療、対照群には標準的な治療のみをそれぞれ実施した。その結果、対照群との比較では、体の自然な免疫反応を抑えるこの治療法により、死者数および生命維持処置の実施数が「著しく」減少したとされる。

 今回の研究結果はまだ論文として発表されていないが、研究チームは、トシリズマブ治療法の明らかな「臨床的有益性」が証明されたとしている。正式な結果を論文で発表する前に研究成果を公表したことについてAP-HPは、「公衆衛生上の理由から」とした。

 ただ、トシリズマブの有効性と副作用の可能性についてはさらに研究を重ねる必要があるとも研究チームは強調している。

「アクテムラ」や「ロアクテムラ」などの商標名で販売されているトシリズマブは、リウマチ性関節炎の治療に広く利用されている。

 研究者らは、トシリズマブには「サイトカインストーム」として知られる免疫反応が過剰に高まった状態を抑える作用があることが考えられるとしている。(c)AFP