【3月25日 AFP】感染者を隔離し、職場で人同士の間隔を広げ、学校は閉鎖する──新型コロナウイルスへの対応において、これら三つの措置を同時に実施することが最も効果的な対策だとする調査報告が24日、シンガポールによる対策への検証を基に発表された。

 医学誌「ランセット感染症ジャーナル(Lancet Infectious Diseases)」に掲載されたシンガポール国立大学(NUS)の研究論文によると、物理的な距離を置かせるこれら三つすべてを同時に実施することで、推定される感染者数が劇的に減少するという。

 ただ、感染者の多くが無症状である場合や、感染拡大のペースが非常に速い場合には効果は大幅に減少するとも指摘されている。

 NUSの調査チームはまず、新型コロナウイルスの感染拡大について4パターンのシナリオを作成。当局が感染者とその家族を隔離するパターン、隔離に加えて直ちに学校を閉鎖するパターン、隔離に加えて職場の半分を2週間の在宅勤務に切り替えるパターン、以上3パターンすべてを実施するパターンだ。

 当局が何の措置も取らず、感染者1人から1.5人に感染すると仮定した基礎シナリオでは、最初の感染者100人が確認されてから80日後には平均累積感染者数は27万9000人、シンガポールの人口7.4%に達すると結論付けられた。

 これと比較し、感染者の隔離、職場での間隔確保、学校封鎖の三つの措置を同時に実施した場合には、推定される平均感染者数は99.3%減の1800人にとどまり、最も効果が出ることが分かった。

 また、論文は「すべての措置を同時に行った場合と比較すると効果は少ないが、SARS-CoV-2(新型コロナウイルスの正式名称)の感染者数を減らす選択肢として次に有効なのは隔離と職場での間隔を確保する措置で、隔離と学校封鎖の措置、隔離のみと続く」としている。

 一方で、基本再生産数(R0、感染者1人が生み出した2次感染者数の平均値)が高くなると、どの措置も効果が出にくくなると論文は指摘。

 基礎シナリオではR0が2.5の場合、人口の32%に当たる120万人が感染すると見込まれるが、三つの措置を同時に実施した場合でも78.2%減の25万8000人が感染することになる。

 また、無症状の感染者の増加を考慮した場合、これらの措置の効果はさらに複雑なものになる。

 さらに無症状でも他人にウイルスを感染させることが可能と仮定した場合、感染者数は急増するという。R0が1.5と低い場合にすべての措置を実施したとしても、感染者100人が検出されてから80日後の平均累計感染者数は27万7000人となり、無症状である人の増加を考慮しなかった場合の1800人とは大きな差が出るという。(c)AFP