「愛情」…犬が特別な理由を科学的に検証する
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■ウィリアムズ症候群の遺伝子
人と人との感情的な結び付きを強くする脳内化学物質「オキシトシン」に関する研究から、最も目覚ましい進歩の一つが得られている。オキシトシンをめぐっては、犬と人間との種間関係にも関与していることが指摘されているのだ。
麻布大学(Azabu University)動物応用科学科の菊水健史(Takefumi Kikusui)氏が主導した研究では、人と飼い犬が互いの目を見つめ合うことで、双方の脳内オキシトシン濃度が急上昇することが明らかにされている。これは母親と赤ちゃんの間で観察される作用に酷似しているという。
また遺伝学の研究分野では、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の遺伝学者ブリジット・フォンホルト(Bridgett vonHoldt)氏が2009年に驚くべき発見をした。それは、人のウィリアムズ症候群に関与する遺伝子変異を犬も保持していることだ。ウィリアムズ症候群は知的な制限と極端な社交性を持つことが特徴とされる。
「犬に関して本質的なことは、ウィリアムズ症候群の人々の場合と同様に、密接な関係を形成したいという欲求や親密な個人的関係を持ちたいという欲求、すなわち愛し愛されたいという欲求なのだ」と、ウィン氏は著作に記している。
他方で、新たな行動実験を通じてもさらに多くの洞察が得られている。ウィン氏自身が考案したこれらの行動実験の多くは、一般家庭でも餌のご褒美の助けを借りて簡単に再現できる。
ある実験では、ドアで犬を隔離し、その反対側に飼い主と餌の入った器をそれぞれドアから同じ距離に置いた。ドアを研究者がロープで引っ張って開けると、犬はまず飼い主の所に向かうことの方が圧倒的に多かったという。
磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて犬の脳を調べた神経科学分野の研究では、犬の脳は褒め言葉に対して、餌と同等かそれ以上の反応を示すことが判明している。