■愛こそはすべて

 ウィン氏は、犬に関する科学において次に注目されるのが遺伝学と話し、1万4000年以上前に犬の家畜化がどのような過程を経て起きたかという謎の解明の助けにもなると考えている。

 DNA配列決定法の進歩により、ウィリアムズ症候群に関係する重要な変異がいつ犬の遺伝子に発生したのかを知ることは可能になると想定される。ウィン氏は、この変異が最終氷期の終わりごろの8000年~1万年前に発生したと推測している。これは人類が犬を連れた狩猟を常時行い始めた時期と重なる。

 科学の進歩という観点からは、これらの研究結果が重要視されることは間違いない。ただ、それだけではなく、犬の幸福への寄与においてもこうした研究は有意義となるとウィン氏は主張する。

 これは、「チョークカラー」などの痛みに基づく荒々しい訓練方法が否定されることを意味する。この種の訓練方法は、飼い主に「犬の群れのリーダー」になることを求める著名なトレーナーらによって広く知られるようになった「支配性」の理解に基づくものだが、この理解は誤りであることが一部で指摘されている。

 ウィン氏は、犬が望んでいるのは、思いやりのあるリーダーシップと正の強化(失敗に罰を与えず、好ましい行動を褒めてその行動を繰り返させる訓練法)を通じた「飼い主からの指示」だと指摘し、「高価なおもちゃやご褒美などを買う必要はない。何を利用できるかは誰にも分からない」と述べる。

「犬たちはただ人との親交が必要なだけだ。人が一緒にいてくれることを必要としているのだ」 (c)AFP/Issam AHMED