■「まだ終わっていない」

 嶺南大学(Lingnan University)に所属する専門家、袁瑋熙(Samson Yuen)氏は、「政府は、抗議デモがやんだと思っているかもしれない。だが、一連の抗議活動の視点に立てば、非常に根本的な要求の一部がまだ満たされておらず、人々の怒りが消え去っていないがゆえに、まだ終わっていない」と指摘する。

 新型ウイルスへの対応をめぐって林鄭長官率いる政権は、新たに多くの支持者をほとんど勝ち得ることはできず、支持率は過去最低の水準のままだ。

 同長官が当初、中国本土との境界の閉鎖にした二の足を踏んだことについては、政界における親中派の僚友たちからも批判の声が相次いだ。また、2003年に死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を経験していたにもかかわらず、十分な数のマスクを政府が備蓄できていなかったことについても、怒りの声が上がった。

 香港で新型ウイルスの感染者が確認されて以降に発生した主要な抗議デモは、感染が疑われる人を隔離して検疫を行う臨時施設に反対する地元住民の集会、および中国本土との境界の封鎖を要求したデモの2度のみだ。

 前者では、隔離施設として使用される予定だった未入居の公営住宅が火炎瓶で放火する事態となった。

 地元区議の羅庭徳(Jasper Law)氏は、境界の封鎖を求める抗議活動は民主主義の問題と関連していると指摘。

「双方(の出来事)とも、政府への深い不信感から発している」とし、林鄭長官の政権が「現実から遊離し、住民の声に耳を傾けるのを欲しない」との印象を与えていると話した。