【3月7日 AFP】新型コロナウイルスは、香港の民主派によるデモの終結という思いがけない贈り物を中国政府に手渡した――だが、香港の高校生であるサムさんのようなデモ参加者は、再び路上へと戻る前に英気を養うチャンスと捉えている。

 逮捕される恐れがあるため本名を名乗るのは断ったサムさんは、「私たちの多く、特に最前線に立つ人々は、少しだけ休息が必要だ」と話す。

 人々が機動隊と衝突を繰り広げ、傘を盾代わりにして壁となり、催涙ガスから身をかわしていた数か月の後、サムさんは今、小さなアパートで身を沈め、学校の宿題やビデオゲームをしながら過ごしている。

「この休みがあって初めて、自分がどれほど(精神的に)参っていたかに気付いた」「とはいってもこれまでと同じように、路上に戻って闘い続ける意欲がある」

 気がめいるような年明けを迎えるはずだった中国政府および香港に駐在する幹部たちにとって、7か月間に及んだ大規模デモの終結という思わぬ幸運に恵まれた。

 中国中部で新型コロナウイルスが現れ始めた頃、香港の活動家が疲弊して逮捕者が大幅に増加する一方で、抗議デモは弱まっていった。

 さらにウイルスが流行して人々が人ごみを避けるようになり、デモは終幕を迎えることになった。

 だが今も住民の怒りが渦巻く香港では、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官や中国政府のいずれもが数年にわたって怒りに火を注いでいた問題に取り組めておらず、ウイルスの流行が衰えを見せたならば、再び容易に政情不安に陥ると予想する声も多い。