■犬のように埋葬

 バングラデシュでは長年にわたり、亡くなった性労働者の遺体は川に投げ捨てられるか、泥の中に埋められてきた。

 地元当局は2000年代初頭、無縁墓地としてごみ捨て場を数か所提供。遺族は麻薬中毒者にお金を支払い、正式な葬儀を執り行うことなく、通常は夜の間に遺体を埋葬していた。

 性労働者グループの代表者は、「もし朝の時間帯に遺体を埋めようとしたら、村人たちが竹の棒を持って追いかけてきたものだった」と振り返る。元性労働者で、今は娘が働く売春宿で暮らす別の女性は、「まるで犬が死んだかのようだった」と語った。

 しかし、ベガムさんの葬儀により、売春街の女性すべてにとって物事が変わるのではないかと希望が生まれた。

 地元警察のラーマン本部長によると、葬儀には200人超が参列し、葬儀後の食事会や礼拝にはさらに400人が参加した。同本部長は「前代未聞の光景だった。礼拝に参加するために、人々は夜遅くまで待っていた。性労働者たちの目には、涙があふれていた」と振り返った。

 地元当局者や議員、地元警察の幹部らは、「こうした差別的なタブーを打破するため」に同本部長の取り組みを支援していたという。

 ベガムさんが貯金して購入した、2部屋を持つ掘っ立て小屋の売春宿を経営するラクシュミさんは、「今後は私を含め、ここで働くすべての女性が、母のように葬送礼拝を受けられることを願っている」と語った。

 葬儀に参列した村議会議員のジャリル・ファキル(Jalil Fakir)氏は、死ぬ際の扱いをより公正にするため、性労働者の葬儀が今後も続けられていくと話す。

「結局のところ、彼女を裁くのは私ではない。もし彼女が何らかの罪を犯したのなら、彼女を来世で裁くのはわれわれではなく神だ」 (c)AFP/Shafiqul ALAM