【2月16日 AFP】バングラデシュにある世界最大規模の売春街で働く性労働者たちは、しばしば人間以下の扱いを受け、尊厳を持って死に臨むことなどほとんどなかった。遺体は多くの場合、墓標なき墓に放り込まれるか、川に投げ捨てられてきた。

 イスラム教徒が人口の多数を占める同国において、売春は合法化されているものの、多くの人が不道徳なものとみなしてきた。

 だが、そうした長年のタブーが破られた。

 バングラデシュの売春街ダウラトディア(Daulatdia)で働いていた性労働者としては初めて、65歳で亡くなったハミダ・ベガム(Hamida Begum)さんに対して今月6日、正式なイスラム教式の葬儀が執り行われた。

  墓地の周りに集まった大勢の女性は、ベガムさんの死に対してだけでなく、ベガムさんの埋葬が開いた象徴的な突破口にも涙した。

 ベガムさんの娘で、母と同じくこの仕事に就いたラクシュミ(Laxmi Begum)さん(35)は、「母がこのように立派な告別の会を持てるなどとは夢にも思わなかった」「私の母が人間のように扱われている」と話す。

 イスラム教の指導者らは長年にわたり、売春が背徳行為であるとして、性労働者の葬送式を執り行うことを拒否してきた。

 ベガムさんが亡くなった際、遺族はベガムさんのような女性に対する一般的な習慣にならい、無縁墓地に埋葬するつもりだった。だが性労働者らのグループが地元警察に対し、ベガムさんが適切に埋葬されるために宗教指導者を説き伏せるよう求めた。

 交渉を取り仕切った地元警察のアシクール・ラーマン(Ashiqur Rahman)本部長は、「イマーム(宗教指導者)は当初、礼拝を執り行うことに消極的だった。だが、性労働者の葬儀に参列することはイスラムが禁じているのかイマームに尋ねると、彼は答えなかった」と述べた。