■野生化で絶滅回避

 頭頂部にモヒカン刈りのような毛が生えている一部を除いて、ショロには被毛がない。専門家らによると、被毛を形成するDNAが正しく読み取られない遺伝子変異によるものだという。

 また、前臼歯が欠損していることも知られており、口からピンク色の舌がのぞいているときには独特な風貌になる。

 ショロの体温はとりわけ高く、古代にはリウマチやぜんそく患者の患部にショロの体をあてがう治療が行われていた。

 1810年にスペインからの独立戦争が起きる頃には、ショロは絶滅寸前に陥っていた。スペイン人は異教の象徴だとしてこの犬を嫌い、殺したり食べたりすることもあった。だが、ショロはメキシコ南部の山あいで野生となって生き延びた後、メキシコ先住民の小作農民らによって再び飼われるようになった。

 ショロがメキシコ文化の象徴として復活を遂げたのは、1910年のメキシコ革命(Mexican Revolution)後のことだった。

 革命では、独裁者ポルフィリオ・ディアス(Porfirio Diaz)と欧州寄りの支配層が追放された。そして、カーロやリベラをはじめとする新たな文化的エリートらが、長らく蔑視されていた先住民文化の象徴の復興に取り掛かった。もちろん。その中にショロも含まれていた。

 20世紀半ばに撮影された白黒写真にはショロを抱き、誇り高い表情をしたカーロとリベラが写っている。リベラは実業家でアートコレクターの友人、ドロレス・オルメド(Dolores Olmedo)にショロのつがいを寄贈した。その子孫が今、旧オルメド邸である同美術館の庭で走り回っている。