【10月23日 AFP】地下鉄運賃の値上げ反対デモが暴動に発展し、これまでに15人が死亡したチリのセバスティアン・ピニェラ(Sebastian Pinera)大統領は22日、首都サンティアゴの大統領府から演説し、経済格差への不満から暴動に発展する事態を予測できなかったとして国民に謝罪するとともに一連の対応策を発表した。

 騒乱の発生を見通せなかったことを謝罪したピニェラ氏は、政府は国民からの明確なメッセージを謙虚に受け止めたと述べ、基礎年金支給額の20%増額、最近発表した電気料金の9.2%値上げの撤回、高額医療費の国庫負担を定めた法案の提出を行うと表明した。

 また最低賃金を月給35万ペソ(約5万2000円)に上げるため国が補助金を出すことや、地域で最も高い水準にあるチリの医療費をカバーする健康保険を政府が導入することも明らかにした。

 演説に先立ちピニェラ氏は同日、複数の野党指導者と事態の収束に向けて協議した。社会党など主要野党3党はボイコットしたが、協議後にアンドレス・チャドウィク(Andres Chadwick)内務・治安相は「大統領はさまざまな解決策の提案に注意深く耳を傾けていた」と述べ、まもなく新たな取り組みが発表されると明らかにしていた。

 国内最大の労働組合であるチリ中央統一労働組合(CUT)とその他18団体は24、25両日の抗議デモとストライキ実施を呼び掛けピニェラ氏に圧力をかけたほか、公共衛生分野の労組も独自のストライキの計画を発表していた。

 地下鉄運賃値上げが引き金となって今月18日に発生したデモは、経済格差などのより大きな社会問題への抗議行動に発展し、南米で最も安定した国の一つと見なされていたチリは、過去数十年で最大の混乱に陥っていた。

 抗議行動は22日も続き、一部の町で略奪が発生したものの、首都サンティアゴを含めおおむね平穏に行われた。軍は22日、4夜連続で、午後8時から翌日午前5時(日本時間23日午前8時から同日午後5時)までの外出禁止令を出した。 (c)AFP/Barnaby CHESTERMAN