【8月30日 AFP】実験室で培養した脳から、人のものに似た電気的活動を初めて検出したとする研究論文が29日、発表された。この研究結果は、神経学的状態のモデル化、さらには人の大脳皮質(灰白質)の発達に関する根本的理解への道を開くものだという。

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 豆粒大の「培養脳」に意識があるかどうかは、まだ明らかになっていない。今回の革新的進展をもたらした研究チームは、検出された電気的活動が早産児のものに似ていることから意識はないとの見方を示しているが、確かなことは言えないという。これはこの研究分野に新たな倫理的次元を開く問題だ。

 成体幹細胞から作製されるいわゆる「脳オルガノイド(細胞集合体)」が登場してから約10年となるが、機能的な神経細胞ネットワークを発達させたのは今回が初めてだ。

 米カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)の生物学者アリソン・ムオトリ(Alysson Muotri)氏と研究チームが医学誌「セル・プレス(Cell Press)」で発表した論文によると、今回の飛躍的進歩は二つの要因によって可能となったという。一つ目の要因は、培地製法の最適化などを含む幹細胞培養過程の向上だ。

 二つ目は、子宮の中で赤ちゃんの脳が発達するのと同じように、神経細胞に発達のための十分な時間を単に与えることだ。これについてムオトリ氏は、「人間の最初期の神経発達はゲノム(全遺伝情報)に符号化されている」と説明している。

 研究チームがオルガノイドから突発的に放出される脳波を検出し始めたのは、約2か月が経過してからだった。

 脳波信号は最初まばらで、みな同じ周波数で発せられた。これは非常に未成熟な人の脳にみられるパターンだ。だが成長するにつれて、異なる周波数で脳波が発せられ、信号がより定期的に出現するようになった。これはオルガノイドの神経細胞ネットワークの発達が進んだことを示唆している。