■同様の成長軌跡

 研究チームは次に、この脳波パターンを初期発達段階にある人の脳の脳波パターンと比較した。比較作業には、早産児39人から記録した脳波活動を使い訓練した機械学習アルゴリズムが用いられた。

 その結果、脳オルガノイドがペトリ皿の中で発達した期間についての予測を正確に行うことができた。これは、自然環境の脳と同様の成長軌跡を脳オルガノイドもたどることを示唆するものだ。

 新生児がどの発達段階で意識を獲得するのか、そして「意識」の定義については、どちらも科学者らの間で論争の的となっている。

 新生児の脳活動を調査した2013年のフランスの研究では、新生児が見せられた顔の画像について考え始めるのは生後5か月からであり、その映像を一時的な「作業記憶」に保存するとみられることが明らかになった。研究ではこの能力を知覚的意識と関連付けている。

■応用と倫理

 脳オルガノイドの応用範囲として考えられるのは、てんかんや自閉症などの神経学的疾患患者の幹細胞から脳オルガノイドを作製することにより、疾患のモデル化を向上させられることだ。治療法の発見につながるかもしれない。

 研究チームは、より基本的な問題も解明したいとしている。ムオトリ氏によると、脳オルガノイドの発達は約9~10か月で止まるが、その理由がまだ明らかになっていないのだという。

「この理由を知りたい。内部への栄養物の供給を可能にする血管新生系がないからなのか、それとも(感覚入力の形での)刺激が単に欠けているだけなのか」──ムオトリ氏は両方の仮説を検証したいとしている。

 そして今後は、脳オルガノイドが人の脳に近づくにつれ、あらゆる種類の倫理的問題が浮上するのは避けられないとしながら、この研究分野を合意された制限と規制の対象とすることを提案している。(c)AFP/Issam AHMED