■水をめぐる争い

 氷河の融解による人類への影響は他にもある。

 ボリビアの政府所在地ラパス(La Paz)の住民は乾燥する冬の数か月、水源の30%をアンデス山脈(Andes)の氷河で賄っている。だが、2016年には水の枯渇が起きた。

「約100の地域で1か月以上水がまったくない状態だった」と、サン・アンドレス大学(San Andres University)の大気研究所所長マルコス・アンドラーデ(Marcos Andrade)氏はAFPに当時の状況を語った。

 氷河による水供給が阻害されたらどうなるのかという明白な事例が示されているにもかかわらず、氷河融解では逆説的な現象が起こる。そのため、これが農業にとっていかに大きな問題であるかを説明するのは難しいとアンドラーデ氏は話す。

「われわれは現在、氷河融解によりこれまで以上の水を利用できているため、農民はそれ(水不足になること)を認識できていない」「当面は良い。だが、ピークを過ぎれば水不足となり、水を求めて争うことにもなるだろう」

 IPCCは、氷河の流出が短期的には継続するが、今世紀末までには減少に転じ、不安定さが増すとの見方を示している。また、地滑り、雪崩、水の汚染も増加することを指摘した。(c)AFP/Patrick GALEY, with Marlowe HOOD