【8月30日 AFP】気温の上昇に伴い極地の氷床が不安定化する中、山地氷河の後退が人類に及ぼす今後数十年の影響について、国連(UN)が報告書をまとめた。AFPはこのほど、9月に開催される気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「海洋・雪氷圏特別報告書」の要約のドラフトを入手した。

 グリーンランドと南極の氷床は2015年までの10年間で毎年約4000億トン失われ、それにより毎年約1.2ミリ海面が上昇した。一方の山地氷河は同時期、毎年2800億トン融解し、海面をさらに毎年0.77ミリ押し上げた。

 独ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Change Impact)の気候専門家、アンダース・リーバーマン(Andres Levermann)氏はAFPの取材に対し、「過去100年に起きた世界の海面上昇の35%は氷河融解によるものだった」と述べた。だが山地氷河の量は限られているため、今後の氷河融解による海面上昇は30~50センチにとどまるとの見通しも示している。

 地球上には古い広大な氷の蓄えである氷河が約20万存在しているが、極地の氷床に比べると比較的小規模なため特に気温上昇の影響を受けやすい。

■水資源への影響

 氷河の後退は、氷河を主な水源としている内陸の人々に影響を及ぼす。

 ヒマラヤ山脈(Himalayas)にある複数の氷河は、地域住民2億5000万人に水を供給すると同時に、川沿いに住む16億5000万人の食料、エネルギー、収入源ともなっている。

 IPCCの特別報告書の中で触れられているある研究によると、温室効果ガスを削減し、地球温暖化を1.5度に抑えたとしても、アジア地域にある高山の氷河の3分の1以上が失われる可能性がある。だが、化石燃料を主な動力とする世界経済が今後数十年にわたって「通常通り」の活動を続ければ、それが3分の2になることも考えられるという。

 IPCCは報告書で、ヒマラヤ山脈中部および西部では、既にかんがい用水が顕著に減少していることを指摘している。また、中欧、北アジア、スカンジナビアなど氷河がほとんどない地域では、2100年までにその80%が縮小すると予想された。

 スイスの科学者らが今年発表した研究によると、温室効果ガスの排出が抑制されなければ、アルプス山脈(Alps)の氷河の90%以上が今世紀末までに消失する恐れがあるという。