【5月14日 AFP】火山の多いアイスランドで、21世紀の錬金術師たちが気候変動を引き起こす二酸化炭素(CO2)を永久的に石に変えようと試みている。

 これは多孔質の玄武岩にCO2を注入し石化させて貯蔵する技術で、何千年もかかる自然界の工程を模倣しているが、技術の力により数年で石化可能だという。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える目標の達成に向けて、さまざまな二酸化炭素回収貯留(CCS)方法を推進している。

 アイスランドのCO2石化プロジェクト「カーブフィクス(CarbFix)」には、同国の発電会社レイキャビク・エナジー(Reykjavik Energy)やアイスランド大学(University of Iceland)の他、フランス国立科学研究センター(CNRS)と米コロンビア大学(Columbia University)の研究者や技術者が参加している。

 氷河と火山、間欠泉が多いアイスランドでは、エネルギー生産の少なくとも半分が地熱源に由来している。カーブフィクスに関わる研究者にとってこれはまさに大鉱脈で、世界最大級の地熱発電所ヘトリスヘイジ(Hellisheidi)発電所が彼らの実験室となっている。

 アイスランド南西部にある火山、ヘインギットル(Hengill)山に位置するヘトリスヘイジ発電所は、溶岩が冷却されてできた玄武岩層の上に立ち、ほぼ無限に水を利用できる環境にある。30キロ離れた首都レイキャビクに電力と熱を供給するため、この発電所では火山の地下水をくみ上げ、6台のタービンを回している。

 プロジェクトでは、発電所から排出される蒸気に含まれるCO2を回収し、圧縮・液化させ水に溶かす。プロジェクト責任者のエッダ・シフ・アラドッティル(Edda Sif Aradottir)氏は「基本的にCO2から炭酸水を作っているだけだ」と説明する。

 この炭酸水は送水管によって数キロ離れた、灰色のドームが並ぶ、月面のような景観をした地域に送られ、地下1000メートルの岩層に注入される。CO2溶解液が石の細孔を満たすと、ガスが玄武岩内のカルシウムやマグネシウム、鉄などと化学反応を起こし、凝固が始まる。