【7月12日 AFP】現在開催中のテニス、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2019)では、観戦チケットを求めるファンが会場近くにテントを張って泊まり込むのが恒例行事となっている。およそ50年前、同じように歩道で一晩を明かした大会のトップも、その伝統をこれからも守るべきだと考えている。

 オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ(AELTC)のリチャード・ルイス(Richard Lewis)最高経営責任者(CEO)は、まだ10代だった1968年、男子シングルス決勝のチケットを買うために泊まり込みで行列に並んだ。行列づくりは古くからの英国の伝統で、ウィンブルドンではセンターコートと1番コート、2番コートでそれぞれ約500枚ずつが売り出される当日券を求め、毎日多くの人が列をつくる。

 ルイスCEOは「みなさんとても楽しんでいるようですし、要望があればテクノロジーを取り入れてやり方を変えられる部分ではあるとは思いますが、やめるのであれば慎重に検討しなくてはなりません。一般に深く浸透しているように見えるからです」と話した。

「テクノロジーで行列に対処することは考えてきませんでしたし、私も検討するつもりはありません。少なくとも近い将来は」「ほとんどの人が、素晴らしい体験だったとおっしゃいます」

 英国でも、人気スポーツの貴重な観戦チケットを、ファンが行列をつくって買い求めるケースはほとんどなくなったが、ウィンブルドンは数少ない生き残り組の一つ。2008年以降はクラブの外壁沿いの硬い歩道ではなく、隣のウィンブルドン・パーク(Wimbledon Park)の柔らかい芝の上で列をつくるのが一般的になった。

 ルイス氏は「私も徹夜で並びましたよ。一種の通過儀礼でした。だから廃止の考えはないんです」と話している。

「当時は13歳で、歩道に並んでロッド・レーバー(Rod Laver)とトニー・ローシュ(Tony Roche)の決勝を見ました」「兄弟と一緒だったんですが、最高の経験でした。夢のようでしたよ。そして今、ロッド・レーバーに会って、本人に『あなたが勝つところを生で見たんですよ』と言えるのも夢のようです」

 ウィンブルドン・パークでは、今も世界中から集まった大のテニスファンがテントを張っている。ルイスCEOは、恒例の休養日である「ミドルサンデー」に、キャンプ中のファンたちの元を訪れた。

「土曜は試合が終わるのが遅くなるので、わざわざ家に帰らず、ここで寝泊まりしてしまうんです」「日曜に公園を歩きましたが、素晴らしい雰囲気でした。みんな本当に楽しそうでした。これぞ偉大な伝統です」 (c)AFP/Robin MILLARD