■嫁ぎ先で見舞われた悲運

 タイズから70キロほど離れたシマヤティーン(al-Shimayateen)地区。地元の15歳の少女ファウズィア(Fawzia)さんは、自身が生まれる前に父親が母親に離縁を言い渡したため、祖母のフスン(Husn)さんに育てられた。両親がそれぞれ再婚すると、フスンさん以外、誰からも面倒を見てもらえなくなった。

 60代のフスンさんは、ヒツジやヤギの世話をして生計を立てている。ただ現在の稼ぎでは、自分と、目が見えない夫、離婚して戻ってきた娘、そしてファウズィアさんを支えるのがやっとだという。

 ファウズィアさんは5歳の頃から祖母のそばで働き始め、家畜の世話をしてきた。そのため、学校には一度も通ったことがなく、文字の読み書きもできない。

「勉強できなかったから、わたしは自分の名前も書けないんです。できるのは、羊飼いとして働くことくらい。それについては祖母に教わったから」

 ファウズィアさんが成長するにつれて、フスンさんは孫に必要なものをすべて買ってやるのが難しくなってきた。ファウズィアさんの父親からの仕送りもなかった。

 そんななか昨年、ファウズィアさんと同じ年の少年の家族から結婚の申し出があった。フスンさんは、それを受け入れた。

 ファウズィアさんも前出のザフルさんと同じように、自分の経験から児童婚には反対だ。「子どもの結婚というのは悲惨なもので、わたしと同じくらいの年の女の子には勧められません。わたしも結婚で苦しみましたから」。一方でこうも言う。「それでも、祖母に頼りきりの生活に比べたら、まだましでした」

 9か月前に結婚したファウズィアさんは今、妊娠8か月の身重の体だ。もうすぐ一児の母になる。だが、生まれてくる子どもが実の父を知ることは一生ない。

「半年前、夫は何人かの人といさかいになり、ひどい暴力を受けて殺されてしまったんです」