■罪悪感を覚える親も

 母親のファティマさんは取材中、娘が受けた仕打ちに対しては自分も罪悪感を感じていると、涙ながらに打ち明けた。「私たちは罪を犯しました。ザフルから少女時代を奪ったのです。娘は結婚で苦しみました。どうか、アッラーが私の罪を許してくださいますように」

 国連の定義で「18歳未満の結婚や、それに相当する状態」とされる児童婚は、イエメンでは元々慣習として広く受け入れられていた。しかし、活動家や子どもの権利擁護団体による粘り強い取り組みや、2008年に強制結婚させられた当時8歳の少女、ヌジュド・モハメド・アリ(Nujud Mohammed Ali)さんが裁判で離婚を認められ、広く注目されたことなどによって、この伝統の負の側面に対する認識が高まった。

 だが2015年に現在の内戦が始まると、法律で婚姻可能年齢を17歳以上にする取り組みも勢いを失った。首都サヌアの議会前では、結婚の法定年齢の導入に反対する人たちによる抗議活動も行われた。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)が2017年に公表した報告書によると、イエメンでは18歳未満で結婚する女性が全体の3分の2超に上っている。この割合は、2015年以前はおおむね5割程度で推移しており、内戦を機に跳ね上がった。

 親が娘を児童婚させる動機はいくつかある。娘の養育費がかからなくなること、嫁ぎ先の夫の家族によって自分たちの家族が保護してもらえるようになることなどだ。また、ザフルさん一家のように、借金の返済や、食品や薬といった必需品の購入のために、持参金に引かれる場合もある。

 ミドルイースト・アイ(MEE)は国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)」のイエメン事務所にコメントを求めたが、慎重な配慮が必要な問題だとして断られた。同事務所の広報担当者ウォルター・マワラ(Walter Mawere)氏によると、イエメンの児童婚は彼らが触れてはならない問題となっていて、これまで一度もコメントしたことがないという。